父エンドスウィープ、母父サンデーサイレンス。問答無用の切れ味と底力を秘める半面、精神的には難しい配合だ。その長所と短所を如実に受け継いだのがインセンティブガイだろう。
ムラ駆け。その言葉がピタリと当てはまる。「要するに気分次第。ヤンチャで力を持て余していますから」と岸本助手は苦笑いを浮かべた。
ウオッカ、デルタブルース、シーザリオ…。いまや名馬の宝庫となった角居厩舎でも手を焼く「ヤンキー馬」だ。これまでは何とか常識にかかるよう工夫してきたが、前回あたりから逆転の発想を取り入れたという。
「今思うと、大敗を繰り返していた時って馬が落ち着きすぎていた。あれがいいんだと思っていたんだけど、違ったんですね。人が乗りやすいよう修正するのはこの馬に関しては良くなかった」
そこで、わがままな性格をそのまま生かすよう軌道修正。その結果が仕上がり途上だった前走・米子Sの2着だった。
「あの後、馬がすごく良くなったんです。数段上向いてます。行く気に任せる調整で、いい感じに馬のテンションが上がってきている」
デキが大幅に上昇しているこの中間は「物音ひとつで飛んで行きそうな気配。実際、飛んで行っています」というから相当な気合の入りようだ。
「それでも、まだつかみきれない面はあるけど、重賞を勝つ力は間違いなくある。新潟の千六はベストだと思うので」
広い直線を縦横無尽。解き放たれた“ヤンキー馬”が激走する。