「去年と何も変わらないですよ。一緒!」
昨シーズンのキーマンになるべき男は、シーズン終盤にこのように吐き捨てた。春季キャンプで「自分も含めて何人か二桁勝利以上は勝たないと優勝できない」と話していた“太陽の逸材”山岡泰輔である。山岡はルーキーイヤーだった2017年シーズンを「ファンの方には申し訳ないんですけど…勝っても負けても4位というのは、耐えられなかった」と振り返り、「二桁以上」という“中目標”と「優勝」という“大目標”を掲げていた。ちなみに“小目標”は「1年間怪我をしないこと」。山岡は「目標が達成できなかった時の絶望感ってすごくダメージが大きいので、僕は目標を大・中・小とたくさん作るんですよ」と複数の目標を作るようにしているのだという。
さらに、「チームを人気球団にしたい」という気持ちも強く、髪型やカラーなどにも細部にわたって拘っているのだ。実際、昨年は京セラドーム大阪で、山岡を意識した髪型をした“山岡少年”を何人も目撃している。このように自身の人気は上がって来ているが、「チーム全体がメディアに取り上げられないと」と考える山岡は、「俺が勝たなきゃダメ!」と自身が勝っていくことで、チームを変えていきたいという思いを描いている。しかし、昨年は7勝12敗と大きく負け越してしまった。
「勝たないとね。何を言っても批判されちゃうでしょ」
勝たなきゃ説得力を持たないことを一番理解しているのは山岡本人である。そんな山岡だが、秋季キャンプでは投手陣のリーダー的な存在として、激しい練習に励み、ファンサービスも率先して行っていた。また先輩、後輩問わず、いろんな選手から「自主トレは山岡(さん)と」という声が聞かれていた。山岡は、“太陽の逸材”から“ピープルズ・エース”へとシフトチェンジしている。金子、西の退団により、オリックスのエースは23歳の右腕に託されたのだ。「チームを変えたい」「人気球団にしたい」という気持ちを実行するには「1人じゃ無理」とも語っていただけに、投手陣は自らが引っ張っていくことで、変えていけたらという気持ちが強いのだろう。
山岡が弟のように可愛がっている“神童”山本由伸が、先発でも実績を積んで“ダブルエース”体制になれば、プロレス界に例えるなら、新日本プロレスの棚橋弘至とオカダ・カズチカのような盤石なツートップ体制が築かれることになり、ここに田嶋大樹やアルバースなどイキのいい先発陣が、内藤哲也やケニー・オメガのような存在になってくれたら、金子や西の穴は埋まるどころかプラスになる可能性を秘めている。
2019年のオリックスは、“ピープルズ・エース”山岡泰輔がキーマンになることで、“主砲”吉田正尚、“鉄人”福田周平ら野手にも良い影響をもたらし、チーム全体で新たな世界を見せてくれるはずだ。
なお、山岡が希望しているとされる背番号19への変更について、球団関係者に取材したところ、「少なくとも今年はない。あるとすれば来シーズン以降」との返答があった。山岡には今年1年間エースとして活躍した上で、金子がつけていた背番号19を背負ってもらいたい。
取材・文 / どら増田
写真 / 垪和さえ