大逃げを打ったシェルズレイがゴール前の坂で失速すると、そこをディアチャンス、サンレイジャスパーが一気に突っ込んだ。外々を通らされたジャスパーとは対照的にチャンスは終始、経済コースのイン。武豊騎手にも迷いはなかった。
「前が飛ばしていたが、速すぎると思って気にならなかった。追い比べでインにもぐり込み、ラスト300mからゴーサインを送ったら、ゴールまで鋭く駆け抜けてくれた」
デビューから28戦目。陣営にとっても、やっとつかんだ重賞タイトルだった。体に余裕があった休み明けのエメラルドSを快勝。そして、今回は12kg減ときっちり絞れていた。デキの良さが勝利をもたらした。
一方、このレースは競馬の難しさ、奥深さを改めて知る一戦でもあった。前半の3歳未勝利戦で1分45秒5(芝1800m)のコースレコードが飛び出す高速馬場。その割にマーメイドSの勝ち時計1分58秒4はレースレコードながら見方をかえれば物足りない。ちなみに9F通過ラップは、その3歳未勝利の3-5着馬と同じ1分46秒3だった。
各馬がマイペースを守れば、今日の馬場なら全馬がこの時計で走れていたはず。だが、シェルズレイが各馬が息を入れる向正面で11秒台(前半3F〜7F)のハイラップを刻み続けたことで、後方各馬の仕掛けのタイミングが一気に難しくなった。
レースの上がり時計(3F36秒7)と勝ち馬のそれ(34秒5)の差は実に2秒2。これだけ差が開くと逃げ馬は最下位付近に沈むものだが、シェルズは上がり3F37秒0と失速しながらも4着に踏みとどまっている。前出の武豊の言葉にある「速すぎると思って気にならなかった」。これぞペースの妙…自ら前を捕まえにいけば、時計は短縮された可能性が高いが、相手の自滅を待った結果がレースレコード止まりにつながったといえるかもしれない。