<ストーリー:生い立ち場面>
あんまり才能はないと思われたが、キョーレツな芸術家思考を持った歌人の母・岡本かの子(寺島しのぶ)と、ただ単に妻を甘やかしている人気新聞漫画家の父・岡本一平(田辺誠一)。その間に生まれた太郎(少年時代・高澤父母道)は、母の愛人・堀口茂治(成宮寛貴)が同居してみたり、とにかく家がぶっ飛んでいたために世間からは浮き、学校でいじめに遭う。孤独な少年のまま青年になった太郎(濱田岳)は画家を志し、父、母とともにパリに遊学に出かける。絵を勉強するためその後もパリに残った太郎はピカソの絵に出会って、自分独自の芸術が開眼。しかしパリにも戦争が近づき…。
<ストーリー:大阪万博「太陽の塔」場面>
戦後、有名画家となって成功した太郎(松尾スズキ)。事実上妻だけどなぜか後年、養女になる当時の秘書・平野敏子(常盤貴子)に支えられ、大阪万博の仕事を引き受ける。ある日太郎は、有名建築家・丹下健三(小日向文世)が設計した万博会場の屋根に大穴をあけて「太陽の塔」を建てようという“べらぼうな”計画を打ち出す。自由すぎる太郎に困惑する設計士たちだったが…。
大阪万博のモニュメントとしておなじみの太陽の塔。高さ70メートルもあるこんなデカいものを、屋根ぶち抜いて立てようなんて太郎さんしか思いつかない。見た目も牛乳ビンのおばけみたいだし。最初はたまったもんじゃないとブチ切れていた丹下健三。しかし丹下のお弟子さん(近藤公園)が太陽の塔のレプリカを見てなぜか芸術が爆発しちゃうの。結局はやることになるんだけど、このへんの作りがプロジェクトXみたい。「その時、丹下が動いた!」みたいな。そして万博は大成功する。
ゆっくり動きながら小刻みに震えたり、芸術家特有の目線、小声で早口にまくしたてる岡本太郎の特徴をよくつかんだ松尾スズキ。舞台で何度か見たことあるけど、演出だけじゃなくてやっぱり俳優としてもすごい。それから若い頃の太郎を演じている若手俳優・濱田岳もいい。年代を追って太郎の思考の移り変わりを丁寧に描いているわね。チャッピーが物心ついた時には、もうおじいちゃんだった岡本太郎センセイ。目がギラギラしておっかない人かと思いきや、テレビで子供たちの絵を表彰したり、ピアノやスキーも上手くて、お茶目でやさしい人物だった。そんな彼の半生は壮絶だったようで、感情の起伏が激しい母に育てられ、いつも孤独だった少年時代を過ごし、なるべくして芸術家になり、窮屈だった日本を飛び出しパリに行くも人種的な差別を受ける。そして時代は戦争へ。そんな太郎が何かをするきっかけとなるのは常に母・かの子が影響。生涯独身を通した岡本太郎は究極のマザコンだったのかもしれないわ。(チャッピー)