亀田3兄弟に個性があるように、江藤3兄弟にもそれぞれカラーがある。
長男・光喜は口数こそあまり多くはないが、胸には熱いものを秘めている。
ボクシングを始めるきっかけも、双子の弟・大喜の活躍が闘争心に火をつけたからだった。
「大喜が大会で優勝すると、小さな町なんで話題になるんですよ。祝勝会で皆から『やっぱりタイキは目が違うね』とかチヤホヤされてるのを見て、オレだけ取り残された気持ちになった。オレも出来るだろうって思ったね」
4年前に上京してきてから本格的にボクシングを始めたため、3兄弟の中でキャリアは一番浅い。そのため、まだまだ発展途上とあって、「全体的に直さなければいけない」と課題は多い。
まずは10月12日の後楽園ホール大会(4回戦)で結果を残し、ベルト挑戦への階段を駆け上がっていく。
一方、次男の大喜は兄と違って本当によくしゃべる、江藤3兄弟のムードメーカー的な存在だ。
他の2人がボクシングを始めたのも、大喜が最初に始めたのがきっかけだ。
「ただ格闘技をやってみたいっていうのがあって、高校に入ってから始めたんですけど、1年生の時は誰も教えてくれる人がいなくて、自己流でやりましたね。初めてのアマチュアの試合で余裕で勝てると思ってたらボロ負けして。本格的には1年の終わりくらいからジムに通い始めました」
その後、メキメキと実力をつけて、沖縄県大会で優勝。プロを意識し始めた。4年前に上京し、具志堅用高会長が亀田兄弟と舌戦を繰り広げていたころ、父親の友人を介して白井・具志堅スポーツジムを紹介してもらった。
現在は高校時代から悩まされていた腰椎の分離症の治療に専念していており、ボクシングは休養中だが、「1日でも早く治してボクシングを始めたい」と復帰に向けて意欲を見せている。
三男の伸悟は才能あふれる江藤兄弟の秘密兵器でもある。高校時代は2007年の選抜大会フェザー級で準優勝という実績を残した。プロに転向するのは自然の流れだった。「兄貴もやってるし、プロになりたいなって気持ちがあった」とその当時を振り返る。
その才能はすぐに目にとまり「高校卒業して2週間ぐらいでこっちに来て、1カ月後に試合しました」という。
当面の目標は新人王。3兄弟の中で唯一トーナメントに勝ち残っており、9月25日には東日本新人王準決勝(後楽園ホール)が控えている。
「新人王になって日本タイトルに挑戦したい。結果を出さないと認めてもらえないし」と気合が入っている。そんな伸悟にも悩みがあるんだとか。「(大喜から)おやすみってメールが毎日必ず来るんですよ」。
今後はその才能をどこまで伸ばすことができるのか。
この3兄弟は本当に仲がいい。現在は、親元を離れ、ひとつ屋根の下で別々の部屋で暮らしているが、食事は3人一緒に食べる。
特に当番や役割が決まっているわけでもない。「ひとつの目標に向けて3兄弟でやると早いよ」(光喜)、「誰かが料理を作って、皿を用意して、コップに水を入れて」(伸悟)と、以心伝心で動いている。
そんなこともあって「兄弟ゲンカはほとんどしない」(大喜)という。「どっちかが言い過ぎると誰かが止め役になる」(伸悟)と自然と役割が決まってくるという。
もちろん目標も3人一緒。「理想は3人で世界チャンピオン」(光喜)、「3人でチャンピオンになりたい」(大喜)、「3人ともベルトを持って沖縄に帰るのがかっこいい」(伸悟)と思いはひとつだ。
まだまだ“はじめの一歩”を踏み出したばかりの3兄弟だが、夢の世界王者トリオが誕生するのもそう遠くはないかもしれない。
<プロフィール>
長男・江藤光喜(えとうこうき)1988年2月8日生まれ。21歳。血液型A型。沖縄県国頭郡本部町出身。172センチ、54キロ。フライ級。右ボクサー。4戦3勝(1KO)1敗。尊敬するボクサーはアレクシス・アルゲリョ。趣味・三味線、得意曲「安里屋ユンタ」。好きな芸能人、中島美嘉。
二男・大喜(たいき)1988年2月8日生まれ。21歳。173センチ、56キロ。血液型、出身地同じ。フライ級。右ボクサーファイター。8戦7勝(5KO)1敗。尊敬するボクサーは具志堅用高会長。趣味・カラオケ、十八番「Lovers Again」。好きな芸能人、土屋アンナ。
三男・信悟(しんご)1989年7月15日生まれ。20歳。血液型、出身地同じ。177センチ、63キロ。フェザー級。右ボクサーファイター。6戦5勝(4KO)1分。尊敬するボクサーは徳山昌守。趣味・映画鑑賞。好きな芸能人、香里奈。