そんななか、急転直下、大関昇進を決めたのが、“万年関脇”の豪栄道(28=境川)だ。豪栄道は先場所(夏場所=5月)、8勝7敗に終わっており、今場所、“大関獲り”の話など出ていなかった。
ところが、14日目に11勝を挙げると、突如風向きが変わり、「千秋楽に勝って12番勝てば大関に推挙する」(審判部)となったのだ。その千秋楽で、白鵬と2敗で並んでいた琴奨菊を破った豪栄道は12勝目をマークし、大関昇進を確実にした。30日に招集される臨時理事会の承認を経て、正式に大関昇進が決まる。
今場所、豪栄道は横綱・日馬富士には敗れたが、白鵬、鶴竜の2横綱、琴奨菊、稀勢の里の2大関を下しており、それが評価された格好だ。
2場所前は12勝を挙げている豪栄道だが、先場所は8勝どまりで、直前3場所での勝ち星は32勝。大関昇進の目安とされる33勝には星が足りない。平成以降、直前3場所の成績が32勝で昇進した例は千代大海、稀勢の里の2例あるが、星以上に問題となるのは先場所の8勝だ。
平成以降でみると、2場所前に1ケタ勝利だったケースは少なくないが、1場所前に1ケタだった例は、92年名古屋場所で昇進した曙のみ。曙の場合、1場所前は8勝だったが、2場所前と直前場所は13勝と立派な成績を収め、直前場所では初優勝を遂げており、審判部から異議が出る余地はなかった。
しかし、豪栄道の場合は3場所で32勝どまり、優勝もなく、1場所前は8勝しか挙げていないだけに、「もう1場所様子を見る」ということでも良かったはずだ。現在、大関は2人おり、無理やり新大関をつくらなければならない状況でもない。
豪栄道は12年夏場所(5月)で関脇に上がって以降、2度負け越したこともあったが、大勝ちもないが、大負けもしない安定感で、14場所連続で関脇の地位を維持している。
誰がどう見ても、“大甘”での昇進が見え見えの豪栄道。協会幹部の期待に応えられるかどうかは、今後次第だ。
(落合一郎)