場所前に降りかかった火の粉を自ら土俵で振り払ってみせた。夏場所直前の8日にモンゴル人力士らとゴルフコンペを開催し、またまた角界を騒がせている朝青龍。この日はともにゴルフコンペに参加したことを問題視されていた新小結の鶴竜との一番に臨んだ。
左ひじ痛を抱えながらゴルフに興じたことから、今場所負けが込めば当然ながら相当なバッシングが待ち受けているが、そんな不穏なムードを一掃する戦いぶりを見せた。得意の張り差しで立ち、右四つからつり落としにいくも残され、逆襲を食らってズルズルと後退。土俵際で背後をとられ絶体絶命のピンチに陥ったが、なんとか相手の左足に右足をかけて跳ね上げ、捨て身の小手投げで逆転勝ちした。
ゴルフ騒動で窮地に立たされる中、見事な逆転勝利。それでも支度部屋では反省の弁を繰り返すばかり。白星発進にもゴルフ騒動の負い目があるのか「相撲に負けて、勝負に勝った。いいところがなかった」「相撲は正直良くなかったな。攻めるはずが攻められちゃった。こういう相撲は少ない方がいい」などと出てくる言葉はいつになく慎重だった。
反省モードの横綱だったが、すぐに化けの皮ははがれた。鶴竜との取組について「良くない相撲」と低姿勢で語っていたが、勝負を決めた小手投げには、内心納得していたようで「柔道の内股みたいだっただろ!?」と自画自賛。「(全日本柔道の)棟田(康幸)を見に行ったからな。俺、棟田になるわ」と微妙なジョークを飛ばして高笑い。
帰り際にはゴルフ問題について「もう終わった話」とサラリと言ってのける始末で、反省の色は感じられない。さらにはスコアを尋ねられて「オマエよりうまい」と誇らしげに切り返す有り様。もはや騒動の幕引きは済んだと言わんばかりの態度だ。
わずか2日足らずで反省から居直り。一昨年にはケガで夏巡業を休みながら、モンゴルでサッカーに興じて引退危機に追い込まれ、復活優勝を遂げた今年の初場所では、優勝決定戦で白鵬を破って渾身のガッツポーズを繰り出して批判を浴びたりと、数々の騒動を起こしてきた。朝青龍にしてみれば、今回は“単独犯”ではなかっただけに、罪の意識も少ないのかもしれない。
派手な小手投げで窮地から脱し、ゴルフ問題も豪快に投げ飛ばした朝青龍。場所後の横綱審議委員会からのバッシングを避けるためにも、是が非でも今年2度目の賜杯を手にしたいところだ。
(本紙特別取材班)