何やらお堅い雰囲気が漂うような場所であるが、一年に一回誰もが楽しめる場所となるのである。
大山プロレスフェスティバル。今年で3回目を数える大山でのプロレス祭り、観戦は無料ということもあり大勢のプロレスファンや地元の人々で賑わった。
大山と言えば、老舗のプロレスショップである「大山アメリカン」が8月31日をもって店舗営業を終了したのだが、店長である高橋司(たかはしつかさ)さんも元気な姿を見せていた。商店街ぐるみでプロレスの大会を行い、知らない人にもその面白さを堪能してもらいたいと始めた当大会である。
当日のメインを締めたのは初代大山女子プロレス選手権保持者であるKAORU。王座決定戦を争った植松寿絵との対戦となった。
植松の差し出した手を嫌い、握手を拒否したKAORU。序盤はオーソドックスに…と思わせた矢先、植松がKAORUの左腕にガブリ。負けじとKAORUも噛み付き、観客からはやんやの声援が飛ぶ。エグい角度のキャメルクラッチ合戦から、植松の弓矢固め、KAORUの吊り天井と美技の競演。
場外に植松をたたき出したKAORUは勢いそのままに商店街までなだれ込んで行く。観客席は一層ヒートアップする。場内に戻る前に植松はKAORUの顔面に水を吹きかける。KAORUが「タオル〜」と言いながら困っていると、もう一度水しぶきがKAORUの顔面を襲う。こうなってくると植松のペース。顔面ウォッシュがKAORUに襲い掛かる。KAORUもジャックハマー気味に植松を叩きつけるが、直後に放とうとしたムーンサルトを読まれると再度植松が主導権を握る。サードロープにKAORUを固定し、ロープの反動を使ってKAORUの顔面にキックを浴びせていく。更にコーナーからKAORUの顔面を狙った低空ドロップキック。
カウント2で跳ね返したKAORUはロープワークを制してフロントキック。垂直落下式ブレーンバスターに繋ぐも、植松のドラゴン・スープレックスの反撃に逢う。狙いを定めた植松は強烈なトラースキック一閃。フォールに入るが鮮やかなブリッジで抜け出したKAORUは再度フロントキック。植松は丸め込み技でペースを取り戻そうとするが、突進したところを逆にエクスカリバーで突き刺され、最後は夜の大山を華麗に舞うムーンサルト・プレス。KAORUが2度目の王座防衛に成功する。
セミファイナルでは遊座大山商店街認定インターコンチネンタルタッグ王座決定戦がラインナップ。ユニオンの石川修司&パンクラスmissionの佐藤光留組とFREEDOMSのGENTARO&女子プロレスラー唯我(ゆいが)の(唯我いわく)「師弟タッグ」が対戦した。
石川のパワー、佐藤の打撃が容赦なく唯我に襲いかかる。何度も窮地に立たされる唯我。その度にコーナーからはGENTAROの激が飛ぶ。場外戦になった際には、石川は自転車を持ち出してGENTAROに突進するという危険極まりない攻撃を仕掛ける。同じ攻撃を唯我にも仕掛けたが、何と唯我は自転車に乗った石川をキャッチし、そのまま電車道で押し返すという常識を覆すような反撃を見せる。両脇で見ている観客は目の前で起こった事実に大歓声を贈る。
最後は上手く石川&佐藤を分断し、GENTAROが「ここぞの場面で見せる」バックドロップ・ホールドを佐藤に決め、大番狂わせとも言える勝利を手中に収める。これにより初代タッグ王者となったGENTARO&唯我。
試合後にコメントを求めると…そこで聞かれたのは素晴らしい(?)掛け合いであった。あまりにも面白い内容だったので、このコメントは別の記事にしてお伝えしたい。
大山商店街マスコットキャラクターの「遊座くん」が怪我のため、弟である「遊座くん2号」が出場したタッグマッチ。リッキー・フジとタッグを結成し、バトラーツの矢野啓太&ピエロのPちゃん組と対戦。ピエロのマスクをかぶり試合に臨んだ矢野、Pちゃんと共にヒールテイストな攻撃を繰り出していく。2号&リッキーのセコンドに就いた遊座くん、怪我をしているにもかかわらず援護射撃を見舞っていく。
リッキーのインサイドワーク、2号の空中殺法が火を噴き、最後は鮮やかなスワントーン・ボムを決めた2号がPちゃんを料理。見事「大山商店街の平和」を守りぬいた。
パッションレッドの高橋奈苗、伊藤道場の佐藤綾子、666の宮本裕向、CHANGOも出場し大会に華を添える。お祭りプロレスならではの華麗かつ強烈な技が全てフィニッシュとなった。集まった観客は大喜び。
地元のジュニアダンスチームもインターミッションで華麗なダンスを披露。中には東京ディズニーシーのオーディションに合格し披露されたダンスも。商店街、プロレスラー、観客の全てが一体となった。
お披露目としてはかなり豪華なメンバーが揃っていたこの大会。プロレスを目的に来た人以外も足を止め、その気分を楽しんだに違いない。思わず勢いで特設会場から出てしまう選手もいたので、その度に安藤リングアナが困った表情をしていたのだが…
腹の底からプロレスを楽しむ事が出来る大会、そう感じた。年に一度の大山祭り、今後も開催される公算が高い。近所の人も来年は一度足を運んでみたらどうだろうか?
(Office S.A.D. 征木大智(まさきだいち))
◆『大山プロレスフェスティバル』
2010年9月11日(土)
東京・板橋都税事務所前広場特設会場(観客5960人=お祭り動員数)
<メインイベント 大山女子プロレスシングル選手権試合 60分1本勝負>
○(王者)KAORU(14分46秒 体固め)●(挑戦者)植松寿絵
※ムーンサルト・プレス。初代王者KAORUが2度目の防衛に成功。
<セミファイナル 遊座大山商店街認定インターコンチネンタルタッグ王座決定戦 時間無制限1本勝負>
○GENTARO【FREEDOMS】&唯我(19分15秒 バックドロップ・ホールド)石川修司【ユニオン】&●佐藤光留【パンクラスmission】
※GENTARO&唯我組が初代王者となる。
<第3試合 タッグマッチ 45分1本勝負>
リッキー・フジ&○遊座くん2号with遊座くん(18分55秒 片エビ固め)矢野啓太【格闘探偵団バトラーツ】&●ピエロのPちゃん ※スワントーン・ボム
<第2試合 シングルマッチ 30分1本勝負>
○高橋奈苗【パッション・レッド】(14分55秒 片エビ固め)●佐藤綾子【伊藤道場】 ※バックドロップ
<第1試合 シングルマッチ 30分1本勝負>
○宮本裕向【666】(10分57秒 片エビ固め)●CHANGO
大山アメリカンホームページ http://www.ohyama-american.co.jp/