報道陣との質疑応答形式で行われたこの日の来日記者会見。ディカプリオは日本で行きたい場所について問われると「一番大好きなのは京都」とコメントし、「大仏を見たり、いろんな寺院、お寺をまわったり、日本は歴史がすごく古くて素晴らしい文化をたくさんお持ちなので、そういうところに行くのが大好きです」と話してにっこり。「今まで桜の開花時期に来たことがない」とも述べ、「まだ咲いたばかり、開花したばかりだと聞いていますが、今回とっても楽しみにしています」と日本での滞在に期待を寄せた。
西部開拓時代のアメリカを舞台にした『レヴェナント:蘇えりし者』は、瀕死の重傷を負ったハンターのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)の壮絶な復讐劇をアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督が臨場感たっぷりに描いた作品。ディカプリオは本作で悲願のオスカーを受賞し、この日の会見でも、「オスカー受賞おめでとうございます」と声をかけられ、嬉しそうな表情。
「今回の作品はわたしにとって特別なもの」と改めてコメントすると、「この映画に参加したすべての人にとって非常に特別なものになりました。一年近くこの世界にどっぷりつかり、永遠に映画史に残るような芸術作品になったとわたしは思っています」と手応えを口にすると、「こういう形でアカデミー賞の栄誉に輝けたことは本当に栄誉あることだと思っています。わたしにとって人生におけるとても大きな、何か重要な一章となりました」と発言していた。
以下は報道陣との質疑応答より
−−今、オスカー像はどこにあるんでしょうか?
ディカプリオ:家にあります。居間です。友達がみんな見せて欲しいってすごく好奇心を持って家に来てくれて、そこにあるのがとっても嬉しいです。
−−念願だったアカデミー賞。5度目のノミネートでの受賞となりましたが、ディカプリオさんの俳優人生、この受賞でどのように変わりましたか?
ディカプリオ:まだ受賞したばかり。本当に数週間前の出来事なので、どのように自分の生活が変わったとか、特に俳優としてどう変わっていくかはまったくわからないです。でも、わたしとしてはまったく変わらないことを望んでいます。本当にこの受賞はわたしにとってありがたいこと。ただ、わたしが仕事をしているのは、受賞するため、こういう賞をいただくためではないのです。やはり自分がもともと持っていた夢ですとか理想とか、そういうものをどんどん追求していくということ、最高の映画や作品を作り上げていくことが今の願いなんです。
−−休養宣言を蹴ってまで作品のオファーを受けたと聞きましたが、そこまでこの作品にほれ込んだ理由を教えてください。
ディカプリオ:脚本を読んで非常に魅かれたということもありますが、やはり天才的なイニャリトゥ監督と組めるということが大きかったですね。わたしは一番最初の作品からずっと彼のファンでして、『バベル』という作品を観たときは「なんて画期的な作品だ!」と思いましたし、彼ら(カメラマンも含めた監督のチーム)との共同作業というものを非常に望んでいたのです。(実際、撮影は)とにかく独創的なものでした。映画を作っているというよりも、壮大な旅に出かけたという、そういう感じでした。過酷な撮影になることは覚悟しておりました。そして遠い辺鄙なところで、氷点下という極寒の地で撮影するということもわかっていました。でも、過酷な状況だからこそこれだけの作品が出来上がったと思うんです。
−−そんな過酷な状況で演技をするレオナルドさんのモチベーションはどんなものだったのでしょう。
ディカプリオ:一番のチャレンジは寒さ。アクションなどは何か月も準備の期間がありましたので、きちんと準備ができたんですけど、この寒さというのは本当にたいへんでした。今、気温変動とかいろいろな問題がありまして、(ロケ地が)急に温かくなって雪がなくなってしまうような状況も起き、アルゼンチンの最南端まで行って雪を探さなければいけないっていうこともありました。こういう撮影はもう2度とやらないかもしれませんが、チャレンジしたことを誇りに思える作品でした。
−−撮影では長期にわたるサバイバルの生活だったようですが、もし、本当にディカプリオさんがそういった状況で、一人でサバイバル生活をしなければならなくなった時、今の生活の中で3つだけ何か物を持っていっていいというようなことが許された場合、何を選んで持っていかれますか?
ディカプリオ:電話ですね。ソーラーパーネルのように受信できるような、充電なんかも切れないようにする装置も。あと、何か防水が利くライターのようなものも。要するのに温かくするためには火を起こさないといけないので。実際に過酷な撮影を経験して、(サバイバル生活が)本当にたいへんだということが身にしみてわかりました。人類は環境に順応するものだといわれていますけど、わたしは(現実にこういうことが起こると)たぶん耐えられないと思います。
−−精神的な安らぎを得るために…たとえばオスカー像は持っていきませんか?
ディカプリオ:(笑顔で)それは家に置いておきます。
−−過酷な撮影が終わられた瞬間にどのような思いを抱かれたのでしょうか?
ディカプリオ:6か月間映画のプロモーションをやってきて、ここが最後のプレス。今日が本当の意味でのわたしにとっての終わりという感じがあり、ホッと安堵しているところです。ここだけでも映画になりそうですね。2年間かけた映画の仕事というのは本当に準備期間から話し合い、撮影、ヒゲをはやすところからはじまって、そしてプロモーションも含めてですね、何か人生の重要な一章を体験したような感じです。作ったというよりも体験だったと思います。この作品は本当に特別な作品。原始的な人生のサバイバルを描いているのですが、人類が何をすべきかということも問いかけています。わたしにとってはとても意義深いものでした。この作品を撮ることでいろんなことを学べたと思っています。
(取材・文:名鹿祥史)