一方、平成のプロ野球においては、たった1度しか達成されていない記録も存在する。三冠王もその1つだ。2004年の松中信彦(当時ダイエー)しか達成者が出なかったこの記録、極めて達成が難しい記録であることは一目瞭然といえるだろう。
しかし、達成まで惜しいところまでいった、いわゆる二冠王は少なくないようにも思われる。直近では2017年のアルフレド・デスパイネ(ソフトバンク)が記憶に新しいところだが、平成ではどれくらい達成されたのだろうか。
1989年から2018年までの30年間で、二冠王が達成されたのは32回(セ16回/パ16回)両リーグを合わせれば約1年に1回、リーグ別でみればおおよそ2年に1回のペースで二冠王は誕生している。
ちなみに、達成回数が最も多いのは松井秀喜(当時巨人)と中村剛也(埼玉西武)の2名。松井は1998年、2000年、2002年に、そして中村は2009年、2011年、2015年にそれぞれ二冠王を獲得している。
三冠王に比べると、意外にも達成回数自体は少なくない平成の二冠王。しかし、二冠王32回における“二冠”の内訳は、「首位打者・最多本塁打」が1回(セ1回/パ0回)、「首位打者・最多打点」が5回(セ3回/パ2回)、そして「最多本塁打・最多打点」が26回(セ12回/パ14回)であり、首位打者が三冠王への大きな鬼門となっている。
中でも、特に首位打者獲得が困難だったといえるのが、1994年から2000年のパ・リーグ。既にピンと来ている人もいるかもしれないが、この期間はイチロー(当時オリックス)が7年連続で首位打者に君臨。後にメジャーリーグでも2度の首位打者(2001年・2004年)を獲得する“絶対王者”の存在は、三冠獲得への高き壁となっていた。
来年からは、新元号の元でシーズンが開催されるプロ野球。“新元号最初の三冠王”を狙うには、首位打者を手中に収められるかどうかが大きなポイントになるのかもしれない。
文 / 柴田雅人