「対戦した投手が全員、関根に対してエグイ攻め方をしていた。『高卒ルーキーだから、花を持たせてやろう』という気になれなかったんだよ。対戦投手を本気にさせたのも、一流バッターになれる証拠だよ。プロの投手のスピードに慣れるまでもう少し時間が掛かるかもしれないが、さほど時間はかからないと思うよ」(前出・同)
「自分の『間』を持っている」と、関根の打席を評するスコアラーもいた。確かに、打席での仕種には新人らしからぬものがあった。足元を整える間、投球の間に構え直すリズム、打ち損じてファールになった打球の方向を見るときの悔しそうな面構え…。特筆すべきは、実戦形式の打撃練習で、直球、変化球のどちらが来ても力強いスイングができていることだろう。一般論として、直球にヤマを張って外れると、大抵のバッターはその変化球にバットを当てるだけで精一杯なのだが、関根はそのどちらが来ても、しっかりとバットを振り切っていた。見逃し三振を喫した打席もあったが、下位指名の高卒野手とは思えないハイセンスなバッターだと思った。
もっとも、昨秋のドラフト会議直前、11球団が『指名挨拶』を済ませた逸材なのだが…。
キャンプ中盤での守備練習も見たが、足も速いから守備範囲が広い。『遠投115メートル強』と紹介された強肩もホンモノだった。荒波翔、多村仁志、松本啓二朗、昨季後半にブレイクした梶谷隆幸も外野にコンバートされた。外野のレギュラー争いを勝ち抜くのは並大抵ではないが、中畑清監督は早い時期に一軍戦を経験させるのではないだろうか。この高卒ルーキーが大瀬良(広島)と新人王争いを繰り広げることになるかもしれない。
投手陣だが、ドラフト2位の平田真吾(24=ホンダ熊本)が、「シーズン中にもっとも目立つ投手になるのでは?」と思った。というのも、今季の先発投手の顔ぶれを見てみると、ベテランの三浦、新加入の久保康友(33=前阪神)と(高橋)尚成(38=前カブス)といった“技巧派”が多い。平田はセットアッパーでの起用が予定されており、先発陣とは正反対でスピードが信条のピッチャーだ。ブルペンでも力強い直球をテンポ良く投げ込んでいて、“目測”ではあるが、一軍帯同の投手のなかでいちばん速いボールを投げていた。おそらく、技巧派の先発投手の後にこの平田が出てきたら、対戦チームは平田の直球をスピードガン表示の数字以上に「速い」と感じるのではないだろうか。
また、攻めのピッチングができる先発候補も加わった。ギジェルモ・モスコーソ(30=前SFジャイアンツ)である。この右腕は上半身の力で投げるタイプで、投げ終わるのと同時に一塁方向に体が流れる。コントロールもイマイチだったが、首脳陣の口ぶりから察するに、先発ローテーション入りは間違いなさそうである。
ドラフト1位の柿田裕太(21=日本生命)、4位の三上朋也(24=JX ENEOS)は“平均点の高い投手”だと思った。柿田のフォークは低い軌道から来て落ちる。191センチと長身の三上のボールには角度を感じた。しかし、良い意味でこうした長所で勝負するのではなく、『総合力の投手』だと思った。投内連携の守備練習も見たが、制球力、捕球から送球に至るまでの動き、送球のコントロール、クイックモーションなど、全てにおいてそつなくこなしていた。際立って「巧い」というものもなかったが、苦手そうなものもない。先発登板したとき、多少の失点はあるかもしれないが、責任イニングの5回以上をきちんと投げ切っている−−。そんな“大人の投手”だと思った。
中畑清監督が「5番・三塁」を予定しているアーロム・バルディリス(31=前オリックス)も順調に仕上がりつつあった。中畑監督は勝負の3季目を迎える。ビックネームの補強はなかったが、着実に投手力の底上げに成功したようである。