まず、新外国人投手のトラビス・ブラックリー(31)だが、その評価は大きく分かれるだろう。「低めにコントロールもできている」と評価する解説者もいたが、身長191センチの大柄なわりには迫力がない。カーブ系の大きく曲がる変化球も投げていたが、真っ直ぐはさほど速くない。これといった特徴が見られなかった。前ソフトバンクのファルケンボーグ(35)は、相変わらず、重いストレートを投げていた。ソフトバンク時代は「連投は3日まで」と契約段階で制限を付けさせていたという。仮に楽天とも同様の附帯事項を交わしているとしたら、救援候補の青山、斎藤隆の負担は軽減されない。星野仙一監督は「もう一人、リリーフが欲しい」と思っているのではないだろうか。
二軍スタートとなった新人投手を含めてだが、横山貴明(22=早大)、相沢晋(26=日本製紙石巻)、相原和友(24=七十七銀行)、西宮悠介(22=横浜商大)、浜矢広大(21=ホンダ鈴鹿)の5人は、早い時期にデビューするのではないだろうか。おそらく、2年目の森雄大(19)、一昨年に高卒ながら7勝を挙げた釜田佳直(20)は星野構想に入っているだろう。だが、左腕の浜矢はスライダー系のボール、カーブ、フォークなど、どの変化球でもストライクが取れる。また、同じく左腕の西宮は真っ直ぐが速く、しかも、サイドスローである。相原(左投左打)も変化球の持ち球が多い。球種の多い投手は、その日の状態を見て、ウイニングショットを変えられる。浜矢、西宮、相原の3左腕のなかから、先発枠を勝ち取る者、連投に制限のあるファルケンボーグの穴を埋めるリリーバーが出てくるだろう。また、26歳でプロ入りした相沢だが、体は細いが、『腕力がある』と思った。タイプ的には球種の多い技巧派だ。素人判断で恐縮だが、彼の持ち球の1つにシンカー系の変化球があった。その落ちるボールを見て思ったのだが、「1〜10球目」、「40〜50球目」、「70球以上」で投げたときの軌道は全て同じだった。投球数が増えても、握力は落ちていないのだ。スタミナもあるはずだ。その意味では、実戦向きの投手だと思った。
福島・聖光学院を甲子園に導いた横山にも光るものがあった。楽天は、どちらかと言えば、体の細い選手が多い。そのなかで、180センチ・85?と恵まれた体格から投げ下ろす投球フォームには、猛々しささえ感じられる。1人で24勝も稼ぐスーパーピッチャーは出現しないとしても、5人の20代新人の『合算』で何とかなるのではないだろうか。
松井裕だが、キャンプ前半でのブルペン投球を見る限りでは、捕手の構えたところにボールが行かないときも多かった。投球フォームはすでに完成しており、下半身にも力強さは感じられたが、130キロ台の球速は、まだコドモだ。伸びしろは十分にある。スターと称されるプロ野球選手の大半は1年目に一軍を経験している。その意味では早い時期での“お披露目”は必要だが、ジックリと、二軍で鍛え上げる方が得策だろう。20代の新人投手たちにはその時間を稼ぐ活躍も期待できる。
メジャー通算150本塁打のケビン・ユーキリス(34)だが、フリー打撃で構えるだけでも迫力はある。規定の大きさのバットを使っているのに、細く見えるから不思議だ。レッドソックス時代を知るメジャーアナリストは「スイングが遅くなった」と辛口な言い方だったが、持病の腰痛を再発させないため、自身でブレーキをかけているものと思われる。
トレード加入の後藤光尊(35=前オリックス)の動きが良い。星野監督は二遊間のスペアとして獲得したようだが、昨季、正二塁手の座を勝ち取った藤田一也が頑張っており、開幕ギリギリまでどちらを使うか、迷うのではないだろうか。
圧倒的な力を持ったエースはいない。しかし、ユーキリスとジョーンズが中核を務める打線なら、先発投手が序盤戦に失点を重ねても、試合中盤には追い付ける。20代の新人投手たちが松井裕を忘れさせる活躍を見せてくれれば、連覇は可能だろう。