さて、堀さんに話を戻そう。彼女にとって不運だったのは、舌がんが発見された頃、関節リウマチの治療中だったことである。
治療薬はメトトレキサートだ。添付文書には、服用者の20・1%に何らかの副作用が生じるとある。肝機能障害と並んで多いのが口内炎だ。2.2%の患者に生じるという。
「この数字は臨床現場ではよく見かける副作用と解釈されるが、リウマチの主治医にいわせると、薬をしばらくストップして様子を見るのが一般的です」(健康ライター)
つまり、舌がんの診断は難しく、堀さんを診察した歯科医が舌がんを見抜けなかったからといって、その落ち度を追及するのは酷ともいえる。
では、医師はどこに注目すればよかったのか。それは痛みの有無だ。
「口内炎は激しい痛みを伴うものの、1〜2週間で自然治癒する。口腔がんによる口内炎は進行するまで痛みが出ない。そして、なかなか治癒しないのです。“なかなか治らない。痛くない”口内炎は要注意です」(前出・井上理事長)
堀さんの前途多難なリハビリはこれから始まる。物を飲み込む際は、口の奥の軟口蓋と呼ばれる部分が鼻腔につながる穴を塞ぎ、さらに気管が喉頭蓋でふたをされて食道の入り口が開く。
手術でこれらの動きにかかわる神経や筋肉が障害を受けると、嚥下障害になり、口の中の水や食物、唾液が気管に入り、誤嚥性肺炎を起こしかねない。言葉の訓練とともに、嚥下機能の訓練が重要になってくる。
堀さんは主演ドラマ『スチュワーデス物語』(1983年、TBS系)で“ドジでノロマな亀”を見事に演じ、一躍トップアイドルとなった。家族や仲間、応援するファンのためにも、病を乗り越えて欲しい。