こちらの画像を見て欲しい。この画像は千秋楽にて披露された朗読劇、田中貢太郎原作の「累物語(かさねものがたり)」の様子を捉えた一枚である。「累物語」こと「累ヶ淵」は四谷怪談などと並んで古典怪談としては非常に有名なもので、容姿の醜さを疎まれて殺された女性“累”の怨霊が何度にも渡って祟りをなすというものが本筋となる。
これは前半の山場、気性が荒く醜い容姿で夫の与右衛門に疎まれていた累が川に沈められ殺されるシーンである。川に見立てた布に向かい、突き落とす演技をする男性(俳優の長栄光之助氏)と牛抱せん夏が写っているが、この男性の顔に注目して欲しい。激しい演技だったためにかなりぶれており、男性の顔が二重になって見えているが、それでもブレと考えるには奇妙な点がある。右と左で顔の造りが全く違っているのだ。左側は長氏本人の顔なのだが、右の顔は眼下が暗く落ちくぼみ、半分ドクロのようにも見える。なお、撮影を担当したスタッフは幽霊については基本、懐疑的な人物なのだがこの写真を見て即座に「これはただのブレじゃない」と感じてしまったという。
また、当日来たお客さんの中には「舞台を横切るなぞの人物の影が見えた」との話もあり、やはり何かの怪奇がおきていたようである。
ちなみに、この怪談ライブの模様は終始動画で記録されていたが、この「累物語」の部分だけ動画が奇妙に乱れて途切れがちになるという事が起きていた。また、千秋楽のチラシには牛抱せん夏と重なるようにして累を題材にした浮世絵の幽霊画がデザインされていた。牛抱せん夏はずいぶん前から千秋楽で「累物語」を演じることを考えていたのだが、チラシデザインの担当者は後に本人から千秋楽のプランを聞くまで「累物語」が演じられると言うことを知らなかったそうなのだ。
古来より、怪を語れば怪に至る、つまり怪談をすれば本物のお化けが出て来てしまうと言うが、これらの怪異もやはり呼び出されてしまった累達の怨霊なのだろうか…?
(文・写真 山口敏太郎事務所)