近10年で実に5頭もの優勝馬を出したサンデーサイレンス産駒不在で迎えた初めての皐月賞。本来なら2001年のクラシック馬の産駒、皐月賞馬アグネスタキオン=アドマイヤオーラ、ダービー馬ジャングルポケット=フサイチホウオー、菊花賞馬マンハッタンカフェ=ココナッツパンチの3頭が“ポストサンデー”の座を争うはずだった。
が、優勝をさらったのは、皮肉にも種牡馬リーディングでは常にSSの後塵を拝してきたブライアンズタイム産駒のヴィクトリー。目の上のタンコブが早世したことで、結果的にリーディングサイヤー“最強の銀メダリスト(?)”の底力を見せつけられた格好となった。
ただ、レース内容は大人とは到底いいがたい。「(田中)勝春君に『後ろで競馬をしようや』と言っていた」とは音無師。ところが、1コーナー付近でハナを切ったサンツェッペリンに早くも競りかけると、無謀なる大逃げ。直前のケイコで見せた終い1F14秒5のバタバタぶりを実戦で披露すると誰もが思ったはずだ。だが、しかし…前半3F35秒9、5F59秒のハイラップを自ら刻んで逃げ切ってしまうのだから、相当な力の持ち主であることは疑いようがない。
皐月賞の逃げ切り勝ちとなると1997年のサニーブライアン以来となり、その時の勝ち時計が2分2秒0。一方、ヴィクトリーは1分59秒9(良)の好タイムで駆け抜けた。あのディープインパクトの勝ち時計とコンマ7秒違うだけだ。サニーブライアンと同じブライアンズタイム産駒でも、今回の勝利の方がより価値が高いといえよう。
次走は定石通りダービーに駒を進めるが、今の精神状態が変わらないようなら、正直いって2400mは厳しい。得意の左回りならフサイチホウオーが黙ってはいないはず。さらに、共同通信杯で豪脚を見せた、これまた東京巧者のダイレクトキャッチもいる。
理性なき暴走か計算された逃げか。ダービーを戴冠するには、気性面の成長が大きな課題となる。