オウム真理教の全盛期、教祖・麻原彰晃を持ち上げたメディアが幾つかある。その代表的な存在が学研のオカルト雑誌「ムー」であった。
学研「ムー」は、麻原彰晃による空中ジャンプの連続写真を掲載、これを奇跡の空中浮遊と信じた読者が、オウム真理教に入信する事態を招いた。この不祥事に関して、ムー編集部はオウム事件当時、他誌に比べいち早く霊感商法の広告を排除したと述べているが、これは論旨のすり替えである。
麻原彰晃の空中ジャンプをトリックとして否定することなく掲載し、結果として読者に対し麻原彰晃を最終解脱者として勘違いさせる誌面づくりをしてしまったマスコミとしての責任が問われているのだ。
このオウム真理教事件以来、良心的な大型書店チェーンやコンビニチェーンは学研「ムー」の取り扱いを取りやめ、テレビの地上波においても、学研「ムー」の取り扱いに関しては慎重になった。消費者を相手にする企業としてのコンプライアンスがそのようにさたのだ。
だが昨夜、日本テレビにてゴールデンタイムで学研「ムー」が堂々と流されるという珍事が起こった。19時から放送された「浜田探検部」にて、学研「ムー」三上編集長のコメントが流され、「ムー」の表紙がでかでかと映し出されたのだ。日本テレビでは『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』の中で「麻原彰晃の青春人生相談」を実施、視聴していた多くの若者を麻原ファンにしてしまった前科があるが、今回も多くのオウム真理教信者を生み出した麻原彰晃掲載誌「ムー」をゴールデンタイムで全国中継してしまったのだ。
「信じられないですね。弊社では学研「ムー」を画面に映すことはありえません。一般の方のインタビューで本棚のムーが入るだけで(モザイクで)消したことがありますし、オウム事件の直前、麻原がムー編集部に出入りしていたのはマスコミ関係者なら知っているはずですよね。放送倫理を考えれば、ムー編集長など使わなくても、もっとまとな専門家がいるはずです」(他局プロデューサー)
「数年前にオカルト番組をやる時に、学研「ムー」や三上編集長をブッキングしようとした事がありますが、麻原の空中ジャンプ問題をスポンサーが問題視して結局、ムー編集部の取材は取りやめにしました」(テレビ業界リサーチ会社職員)
「オカルト=ムーという発想が安易です。年配の人は頭が固いんです。いまやオカルトは家族で安心してみれるエンターテイメントの分野であったり、討論番組のテーマであったりするわけです。恐怖を売り物にするムー的なオカルト観は昭和のノストラダムス騒動で懲りているはずです。サブカルチャーとして新しいオカルトの作り方があるはずです」(制作会社ディレクター)
オウム事件の後遺症が癒えていない現状で、麻原彰晃のインチキ写真を掲載した雑誌「ムー」をゴールデンタイムで流すなど、日本テレビの脇の甘さは猛省すべきではないだろうか。