「まず第一に、情報ありき。金庫の有無はもちろん、ターゲットがどんな家に住んでいて、どこにどれだけの金を置いているか。それこそ、僕らの場合は相手先の家や事務所の見取り図までなければ、強盗に踏み込むことはありません。なんでそんなものが手に入るのかと言うと、ネタの大半が内部情報なんですよ。ヤクザにせよ、詐欺グループにせよ、あるいはサラリーマンにしてもそうかもしれませんが、最近のガキはすぐに辞めるし、簡単に裏切りますからね」
とはいえ、この内部情報が正しいとは限らない。それどころか、ライバルグループによる罠の場合さえある。ゆえに、X氏たちは下調べを欠かさない。
「ターゲットとその家や事務所の周辺に日替わりで張り付かせ、情報元から入手した情報が正確かという点を中心に、最低1カ月くらいは動向を探ります。例えば、詐欺グループがターゲットであれば、四六時中、事務所に金を置いているわけではない。売上金を上納するタイミングや給料日など、実行日に確実に金があるのか、また、金庫の番号を知っている幹部が確実にそこにいるのか、徹底的に情報を精査します」
こうした下調べも含め、実行グループの人員は約4〜5人。それぞれ見張り役、運転役などの分担を決め、あらゆるトラブルを想定してリハーサルを重さねるという。
当然、時間も金もかかるため、「渋谷区のアポ電強盗のように、本来は400万円くらいじゃ割に合わない」とX氏は語る。万が一、捕まった際の量刑の重さを加味すればなおさらだ。
「僕らは基本的に“表に出せない金”しか狙わないんですが、例外的に高齢者を狙う場合もある。それは、相手先の家族構成から家の見取り図、資産状況まで、かなり具体的で正確な情報が入った場合です」
そんなネタがどこから漏れるかといえば、内装業者やリフォーム業者、介護福祉士やホームヘルパーなど、さまざまなケースがあるらしい。
いわゆる半グレは表の仕事でそうした会社を経営していることも多く、どれも昔から元ヤンが多い業界なので、X氏たちにとっても身近なのだそう。
「それでも、表に出せない金を狙う場合と違い、警察に追われるリスクがデカすぎますからね。2000〜3000万円は確実に手に入るくらいの案件でなければ、他のグループに回してしまいますね。ましてや最近のアポ電強盗のように、高齢者リストから適当に電話をかけ、見ず知らずの家に踏み込むなど自殺行為ですよ」