厳しい経験に裏打ちされた自信。それが今のディープスカイをひと回り大きく映している。王者を目指す者の、これがギラギラしたオーラなのだろう。
「この春は、大阪杯の後、安田記念から宝塚記念を予定している。もちろんすべて勝つつもりでいる。この3つで国内最強を実証して、秋は海外へ向かいたい」
大言壮語と取られかねないこの言葉を、昆調教師は何のためらいも、てらいもなく言ってのけた。それだけ愛馬への信頼が厚い。
すべてはこれからのためだった。昨年、ダービーを制して3歳馬の頂点に立った後、あえて茨の道を選んだ。
秋、休み明けの神戸新聞杯を楽勝してからだ。勝負付けの済んだ同世代で戦える菊花賞を捨て、天皇賞・秋、そしてジャパンCへと進んだ。結果は(3)(2)着と惜敗だったが、ウオッカ、ダイワスカーレット、スクリーンヒーローといった最強クラスの古馬に食い下がった経験は、確実に血肉となった。
休み明けのここも仕上げに抜かりはない。もともとが叩き良化型。そこを十分見越して、じっくり乗り込まれた。「仕上げ不足だった神戸新聞杯とは雲泥の差。基礎からみっちりやってきたしね。心肺機能も素晴らしいし、背も少し伸びた。これまでの休み明けでは一番といっていい」とうなずいた。19日には栗東CWコースで6F80秒5、ラスト1F12秒5。25日にも坂路で800メートル53秒4→12秒6と文句なしの動きを見せている。
秋は、米か欧州か。そのためにも、春は日本のファンの目にその強さをしっかり焼き付けたい。世界の空へと羽ばたこうとしている侍ディープの走りを見逃すな。