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日本球界は大恐慌時代を乗り越えられるのか? 労組選手会の大罪(上)

 労組・日本プロ野球選手会(新井貴浩会長=阪神)の浮世離れの権利要求も、日本球界大恐慌に拍車をかけている。その大罪は断罪される必要があるだろう。今オフ、球界を悩ました、日本ハムをFAしながら取り手がなく、一時宙ぶらりん状態、巨人が獲らざるを得なくなった藤井秀悟の問題もそうだ。08年に12球団側が提案した「国内FA権利取得期間の短縮、メジャーへの流出防止のために海外FAは期間据え置き」という、FA改革案を選手会が了承したツケだ。この他にも問題は山積しているのが現実といえる。

 「FA7年を受け入れなければ、裁判に訴える」。宮本慎也前会長(ヤクルト)の法廷闘争も辞さない強硬主張に対し、12球団側は最後の最後に腰を引き、FAの権利取得期間の短縮を提案した。「国内は8年間に短縮する。ドラフトの希望枠がなくなった07年以降に入団した大学・社会人出身の選手は7年間。海外FAは現行の9年のまま」という改正だ。この案を選手会が飲んだのは、「7年という数字が出てきたからね。国内と海外の格差は今後、修正していかないといけないし、最終的には全員が7年を目指す…」と宮本前会長は言っていたが、国内と海外格差が早速、国内FA権しか持っていない藤井問題を引き起こしたのだ。
 「まさか海外と国内FA期間の格差がこういう形で問題になるとは思わなかった」と選手会幹部も頭を抱えた。野球協約上では、国内FA権しかない選手がFA宣言して取り手のない場合、海外へ行くことも出来ず、八方ふさがりになってしまうのだ。選手会が「ドラフトに希望枠がなくなった07年以降入団の大学・社会人出身の選手は7年間でFA」という、こだわりのFA7年間に飛びついたからだ。選手の立場からすれば、国内と海外に権利取得期間の格差のあるFA制度は大問題だ。国内FAなど本当の意味のフリーエージェントではない。メジャーへもどこへでも行けるからFAなのだ。が、藤井問題にはさらに厄介な火種があった。FA宣言した藤井の名前を保留選手名簿に載せた日本ハムが「契約はあり得ない。保留選手手当も出さない」と明言したからだ。球団側が保留選手手当を出さなければ、選手は自由契約になってしまう。どうしてもメジャーへ行きたい選手がこの手を悪用すれば、8年でメジャー入りする新たな抜け道にもなりかねない。
 そうなったら、海外FA据え置き、国内FA短縮という、巨人の思惑は完全に狂ってしまう。主砲・松井秀喜がヤンキースへFA移籍。「高校時代に巨人が指名した縁もあるし、日本球界のためにも宝である福留選手をメジャーにはやらない」と大見得を切って、中日からFAした福留孝介の獲得宣言。それなのに、メジャーバブルの前に争奪戦になる前に白旗。「メジャーとの常識外のマネー戦争はしない」とすごすごと撤退宣言して、カブスに福留をさらわれている。メジャー相手に何度も屈辱を味わわされている巨人は、選手のメジャー流出に神経をとがらせ、「海外FAは9年のまま」という格差FA制度新設の旗振り役になっている。その一方で、国内FA短縮には積極的に動いている。
 「海外FAに歯止めをかければ、国内FAの資格しかない選手を取れる可能性が高まる」という、相変わらずの時代錯誤の巨人至上主義があるからだ。そんな巨人と選手会顧問弁護士との間に奇妙な蜜月関係疑惑がある。巨人フロント首脳が「選手会の弁護士は果完全に手の内に入れている」と豪語すれば、選手会の顧問弁護士も「巨人は抑えていますから」と明言。互いに「手の内に入れた」宣言をしているというのだ。火のないところに煙は立たない。藤井問題の決着も選手会と巨人とのタッグマッチが見え隠れする。藤井が宙ぶらりんのまま年を越し、前述したように、日本ハムが保留選手手当を支払わなければ、自由契約になり、メジャー行きも可能になってしまう。巨人にとっては、なんのための国内と海外FAの格差か、意味がなくなってしまう。格差を飲んだ選手会としても立場はない。

 12月3日の労組・選手会総会前に巨人が藤井獲得を決めたのは、意味深だろう。これ以上、格差FAが問題を大きくする前に、あうんの呼吸で、巨人と選手会がタッグマッチという疑惑の図式が浮かび上がる。
 そもそもFA制度導入が実現したのは、「FA制度とドラフトでの逆指名制度を導入しなければ、新リーグを結成する」という巨人・渡辺恒雄球団会長の強権発動によるものだった。「選手会は労働者貴族だ」「たかが選手の分際で」などと、古田敦也元会長(前ヤクルト監督)が率いる労組・選手会を罵倒する爆弾発言を連発しながら、その陰で巨人と選手会はFA制度に関しては協調路線を取ってきている。その後も、海外FA移籍だけはタブー視しながら、FA短縮そのものに一番熱心だったのも巨人だ。FA制度に関しては巨人と選手会は、同床異夢とはいえ、事実上、共同歩調を取ってきているのだ。何か事あれば、「法廷闘争も辞さずの」強行突破路線を敷いている選手会と巨人の蜜月疑惑はぬぐいきれない。
 かつては球界の盟主と言われながら今はリーダーシップを失った巨人球団フロント首脳は、労組・選手会を取り込んででも、NPBの中で復権したいというなりふり構わぬ動きに出ているのだろう。その態度が選手会をつけあがらせ、暴走させている一面もある。
(つづく)

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