そんなさんまは過去、バラエティだけでなく俳優としても数々のドラマに出演し、人気を博していた。しかし、その共演者と一触即発の空気になったことがある。
それは1996年に放送された人気刑事ドラマ『古畑任三郎』(フジテレビ系)第2シリーズ「しゃべりすぎた男」に、さんまが出演した際に起こった。同作品は元々、マネージャーを殺すロックシンガーの話を予定していたものの、犯人役が決まっていたさんまから「古畑と犯人の会話だけで成り立っているような、そんな話にならんかな?」と提案を受けたことで、脚本家の三谷幸喜が変更。その結果、ドラマは法廷が舞台となり、さんまは敏腕弁護士を演じることになった。
しかし、さんまのその提案は、自分の首を絞めることとなる。彼は事前に台本を覚えてこない主義であるため、膨大の台詞と慣れない専門用語が飛び交う弁護士役にNGを連発。すると、その様子を見ていた主演の田村正和から「今度間違えたら、自分が帰りますよ!」と声をかけられたのだという。
だが、その直後、普段は滅多にNGを出さないと言われる田村がミスをしてしまい、さんまは、ここぞとばかりに「はい、NG! 貸しね貸しね! 田村さん失敗しましたよ! 貸しで〜す!」と大騒ぎ。さんまとしては空気を和ませようと、いつもの軽い調子でふざけただけだったのかもしれない。しかし、現場は凍りつき、田村は「すいません、ごめんなさい」と謝罪。その後、怒って楽屋に帰ってしまったと言われている。
さらに、現場にいた西村雅彦も「あれは言っちゃダメ! さんまちゃん、これから気をつけて」と焦っていたようだ。その後、なんとかスタッフが田村を呼び戻し、撮影が再開するも、現場はかなりピリついた空気となっていた。
そんななかで行われた次の撮影は、現在も古畑ファンから絶大な支持を受ける、法廷を舞台とした壮絶なクライマックスシーン。ここで古畑は、反撃とばかりにアドリブを盛り込み、現場をかき回した。そして、ドラマのラストバトルにて、さんまの目が泳いでいるのは演技でなく、圧倒的な迫力で迫ってくる田村へのリアルな反応とも噂される。
当時、ドラマの1シーンであそこまでの緊張感が生まれたのも、撮影直前に2人がピリついてくれたおかげなのかもしれない。その結果、ドラマ史に残る最高のクライマックスが実現したのだから。