「ジカウイルスを媒介する蚊の広い分布と世界を往来する人々の流動性とが結び付けば、ジカ熱が第2のエボラ出血熱となる可能性は小さくない。この夏開催のリオ五輪による人の移動で、閉会後に日本に持ち込まれることも懸念されます。他にアフリカやアジア太平洋地域での発生が確認されていますが、死亡者は出ていません。ただし、ブラジルでは昨年10月以来、3900人近い小頭症の赤ちゃんが誕生していることや、神経の難病ギラン・バレー症候群の発症も増えているという報告があります。同国は世界で初めて『小頭症はジカウイルスを持つ蚊によって発症する』という因果関係を発表していますが、その感染メカニズムはまだ分かっていません」(医療ジャーナリスト)
死亡例がないことは一安心だが、どんな病気なのか。
「デング熱とよく似ており軽度の発熱や頭痛、発疹、筋肉痛、関節痛、倦怠感などの症状が2〜7日間程度続きますが、症状は自然に治まる。一度ジカ熱になると抗体が体内にできるため、二度は発症しません」(同)
それでもジカ熱が注目を集めている理由は、感染範囲の急拡散だ。
「昨年5月にブラジルで最初のジカ熱が報告された後、今年1月23日までの9カ月間に21カ国・地域に急速に拡大しました。ジカウイルスは、ネッタイシマ蚊やヒトスジシマ蚊によって媒介されることが確認されている。ネッタイシマ蚊は日本には常在していませんが、ヒトスジシマ蚊は秋田県や岩手県以南の地域に存在し、日本でもタイのサムイ島から帰国後にジカ熱と診断された日本人旅行者に一例が報告されています」(国立感染症研究所)
今のところ、ジカ熱用ワクチンや治療薬は存在しない。そのため流行地域を訪れる際にはできるだけ肌を露出せず、蚊に刺されないように注意することが予防策となる。
しばらくは流行地域への渡航は控えた方がよさそうだ。