25日の千秋楽をもって、全15日間の日程が終了した大相撲春場所。大阪を舞台に行われたこの場所で優勝を果たしたのは横綱鶴竜であった。
白鵬・稀勢の里の2横綱が欠場したことから、一人横綱として春場所に臨むことになった鶴竜。ウィークポイントである“引き癖”が顔を覗かせた取組も何番か見られたものの、初日から11連勝で優勝争いを牽引した。
12日目に関脇栃ノ心に連勝を止められたものの、優勝を逃した初場所のように敗戦をズルズルと引きずらなかった鶴竜。その後14日目の豪栄道戦に勝利して優勝を決め、結果的に13勝2敗の成績で8場所ぶりに賜杯をその手に手繰り寄せた。一人横綱としての責務をしっかりと果たした15日間と言っていいだろう。
場所前には、先場所平幕優勝を果たした栃ノ心、大阪出身で今場所がご当地場所の大関豪栄道、加えて先場所12勝3敗で優勝次点の成績を残した大関高安も優勝候補として名前が挙がっていたが、蓋を開ければ優勝は横綱。波乱の初場所から一転、春場所は順当な結末を迎えることになった。
ところで、春場所は古くから“荒れる春場所”と呼ばれている。何をもって“荒れる”とするのかは人それぞれだろうが、賜杯の行方という観点でみると近年は荒れない春場所が続いている。過去10年に絞って見ても、その傾向は顕著だ。
今場所を含めた過去10年の春場所において、横綱以外が賜杯を手にした例は大関時代の鶴竜が初優勝した2014年のただ一例のみ(場所後に鶴竜は横綱へ昇進)。その他の年は全て番付が横綱の力士が場所を制している(白鵬6回・稀勢の里1回)。なお、2011年は当時角界を揺るがしていた八百長問題の影響により春場所自体が中止となっている。
波乱のない年が続く近年の春場所をみると、“荒れる春場所”というのも今や昔の言葉となっているようだ。もっとも、土俵の外は貴乃花親方の行動や十両・貴公俊の暴行騒動などで大いに荒れ模様だったのだが…。