白鵬・稀勢の里の欠場により、一人横綱として春場所に臨んでいる鶴竜。15日に行われた5日目の取組では平幕宝富士と対戦し、“結果的に”5勝目をマーク。同じく全勝の松鳳山・魁聖と共に優勝争いのトップに立っている。
なぜ、“結果的に”という言葉を用いたか、それはこの日の鶴竜の相撲内容に理由がある。この一番では立ち合いからのど輪で圧力をかけ、一気に宝富士を土俵際まで追い込んだ鶴竜。この時点では、相撲内容は盤石といっても過言ではなかった。
しかし、宝富士の上体が起き上がっていたこともあったのか、鶴竜はこのタイミングで引き技を選択してしまう。これに失敗した鶴竜は宝富士の逆襲を受け、最後は鶴竜が引きながら、そして、宝富士が鶴竜の足に手をかけながら同時に土俵外へ。際どい勝負になった一番には物言いがつけられた。
物言いの結果、取り直しとなり命拾いした鶴竜は、その後の一番では宝富士を圧倒。なんとか5勝目に漕ぎつける結果となった。ただ、勝負所で引いてしまうという“悪癖”が顔を出したことで、鶴竜の今後に大きな不安が残ってしまったことは否めない。
今回露呈したような引き癖は、先の初場所でも悪影響をもたらしている。この場所に自らの進退をかけていた鶴竜であったが、初日から10日目まで破竹の10連勝。引退はおろか、復活優勝も射程圏内という状況だった。
しかし、迎えた11日目の玉鷲戦。鶴竜は不十分な体勢から引き技を出してしまい、あえなく土俵を割ってしまう。それまでは鳴りを潜めていた引き癖が出てしまった影響は大きく、鶴竜はその後の取組でも、思い出したかのように引き技を連発。その結果、11日目からまさかの4連敗を喫し、平幕栃ノ心に賜杯をさらわれてしまった。
終盤の失速でケチがついてしまったが、初場所で11勝を挙げたことにより鶴竜の進退問題は一応消滅している。とはいえ、今後も“引き際”については考え続ける必要がありそうだ。