土俵外の出来事ばかりが取り上げられている昨今の角界だが、初場所では久しぶりに明るい話題もあった。未来を嘱望される2力士、横綱・大鵬の孫である納谷と横綱・朝青龍の甥っ子である豊昇龍が揃って初土俵を踏んだのだ。
注目が集まった前相撲では、早くも両者の直接対決が組まれ、納谷がすくい投げで豊昇龍を撃破。偉大な横綱の血が流れるサラブレッド同士の白熱した取り組みには、多くのフラッシュがたかれていた。
互いに3勝ずつを挙げた納谷と豊昇龍は、3月場所から序の口力士として番付に加わることが決定しており、当面は関取として扱われる十両への昇進を目指すことになる。そのポテンシャルの高さ故に、序の口からの最速記録である6場所での十両昇進を期待する声もあるが、あまりにも早すぎる出世というのも考えもののようだ。
序の口から土俵人生がスタートした力士の内、6場所で十両に昇進したのは板井(当時のしこ名は高鐡山)、土佐豊、常幸龍、炎鵬の4人。しかし、その中で土佐豊と常幸龍はその後怪我に苦しみ、板井も八百長との関わりからその経歴にはケチがついている。
今年の初場所後に十両昇進が決まった炎鵬にしても、身長169cm・体重91.1kgという小柄な体格のままでは上位進出の目は厳しい。同じ小兵力士で炎鵬の兄弟子でもある石浦(身長174cm・体重116kg)が幕内下位で苦しんでいる現実を見てもそれは明らかだろう。
前述の4力士の例からは、土俵人生が必ずしも出世の速度で決まるわけでは無いということが伺える。その話題性・将来性の高さから、求められるものが日々大きくなっていくことが予想される納谷と豊昇龍だが、周囲の喧騒に踊らされることなく、“急がば回れ”の気持ちでじっくりと稽古を積んでいくことが彼らのこれからを左右するのかもしれない。