本物を見極めるのに、長い時間はいらない。アントニオバローズはわずか1戦、しかも未勝利の勝ちっぷりだけで、奥深い将来性を誇示してみせた。
「能力はね、クラシック級といえるんじゃないかな。道中は物見ばかりして気もそぞろ。まったく集中せずにあの結果だからね。末恐ろしいぐらいだよ」
水元助手が驚きを込めて振り返ったのは、前走の未勝利戦だ。道中はサッと4番手につけたが、走りっぷりは確かに若さ丸出し。勝負どころ、ペースが上がっていく3、4コーナーでは自分から走るのをやめようとしたほどだった。それでいて2着に2馬身2分の1差をつける圧勝だった。
しかも、実戦は夏の小倉の新馬戦から遠ざかっており、4カ月半ぶり。実質、デビュー戦のようなものだった。成長分もあったとはいえ、プラス16キロの馬体重には使い込めばまだまだ良くなる余裕も含まれていた。「本当に強い内容だった」と力を込めるのもうなずける。
遊びながらの圧勝劇だっただけに、疲れは無関係だ。昨年12月20日にレースを終えた直後に、目標をこのシンザン記念に設定。同31日には栗東坂路で早くも時計を出した。800メートル53秒8→39秒2→13秒0をマーク。脚さばきは軽く、時計のかかる重い馬場状態にもかかわらず、実に鋭いフットワークを披露した。「年末年始の変則日程もうまく乗り切れた。元気いっぱいだよ」。上積みは合っても、まず反動はない。
父は晩成型として定評のあるマンハッタンカフェ。馬体のシルエットも伸びやかだ。本来は「二千前後を使っていきたい」ところだが、あえてマイル戦を選んだのには理由がある。「まだ物見をする心配があるから、前走の千四からまずは1F延ばしてみる。とにかく徐々にレースを覚えていけば、相当強くなっていく器だから」
春はまだ先。焦らず少しずつ。その過程で勝利を手にすれば、一気にクラシック有力候補の座が見えてくる。