「佑ちゃん(斎藤佑樹=日本ハム)の名言『持っている』にひっかけた、『澤村は持っていないオトコ』なる揶揄も定着しつつあります。本人はもちろん、巨人関係者は面白くないでしょうが」(メディア陣の1人)
澤村は、本当に“持っていないオトコ”なのだろうか。
過去10試合の先発成績を改めて見てみると、「他の新人投手」とは比較にならない重責が確認できた。
4月15日(対ソリアーノ=広島)
同21日(対岩田=阪神)
同28日(対館山=ヤクルト)
5月5日(対岩田=阪神)
同11日(対ハミルトン=横浜)
同17日(対岩隈=楽天)
同23日(対寺原=オリックス)
同31日(対石井一=西武)
6月6日(対ウルフ=日本ハム)
同12日(対金子千=オリックス)
先発した試合のほとんどが、エース対決になっている。タイトルホルダー、ベテラン、外国人投手と投げ合ってきたわけだ。
ライバル球団のスコアラーがこう言う。
「(球場バックスクリーンに表示される)スピードよりも速くないと感じる試合がいくつかありました。数字以上に速いと思えたのは、5月31日の西武戦かな。どの試合にも言えることですが、澤村は走者を背負った場面でも動じないというか、精神的に強い投手だと思います」
エース対決は僅差のゲーム展開となる。得点圏に走者を背負う窮地の連続…。したがって、澤村の投げる試合は常に緊迫した展開になる。こうしたインパクトの強い試合の連続が、セ・リーグ先発投手部門でいきなり4位に躍り出た要因だろう。
私見になるが、澤村のピッチングには悲壮感がある。普通、人気を博す新人投手にはハツラツさ、アイドル性といった『光』がある。しかし、澤村は違う。味方打線の援護に恵まれないなどの『負』も、観る者を惹き付ける要素に代えてしまう。そんな隠微な魅力も伝わってくる。
敗戦ゲームでも、「次こそ」と期待も持てる投球内容だからこそ、ファンも澤村に投票したのではないだろうか。
ペナントレース中盤以降、巨人が首位戦線に浮上するには、澤村の勝ち星が負け数を上回らなければならない。期待の大きさだろうが、そういう大事な試合に新人投手を借り出す巨人のローテーションも考えものである。(スポーツライター・飯山満)