引っ掛かり気味に先頭を奪うと、そのまま後続に一度も影を踏ませなかった。上がり3Fは例によって33秒6の鋭さ。逃げながら、ラストをこの時計でまとめられては後続はまったく太刀打ちできない。
「体質が強くなった結果、ローズSではああいう競馬ができた」と松田国師は振り返った。春は桜花賞を制したものの、強い調教を課すと体温が上がる弱さに悩まされていた。シーズン最後とぎりぎりの仕上げにかかったオークスも熱発で取り消している。
「まだ強いケイコに耐えられなかったんだね。負荷をかけるとすぐ38度5分まで上がっていた。でも、ひと夏越してそれがすっかり解消された」ふっくらした馬体、迫力ある大きなフットワーク。同じ栗毛の兄、ダイワメジャーを彷彿させる攻撃的な先行力が身についた。
春はウオッカがダービーを勝ち3歳牝馬ナンバーワンの座に就いた。しかし、そのウオッカを完成手前だった桜花賞でねじ伏せたのはこのスカーレットだ。
だが、松田国師はこう言って気を引き締めた。「ウオッカはもちろん夏場に力をつけた馬もいる。簡単に勝てるメンバーじゃない」と。油断は禁物。最後の最後までハードに攻め抜く“マツクニ流”で最後の一冠を獲りにいく。