黒木氏は元警視庁巡査部長で、未解決事件や警察不祥事などについて精力的に調査していた。警察官時代の実体験に基づき、警察の裏金作り(偽造領収書作成)の実態なども告発している。
黒木氏はブログでも情報発信しているが、10月1日には岩手県警、警察庁、中井洽・前国家公安委員長らに関するブログ記事が狙い撃ちされたかの如く削除されたという。しかし、削除にも屈することなく、復元した記事を再掲載した。死亡前日にもtwitterで岩手17歳女性殺害事件について「税金が警察の犯罪隠しに使われています。皆さん、追及の声を上げて下さい。お願い申し上げます」と訴えていた。これらの状況からインターネットでは、黒木氏は自殺ではなく殺されたのではないかとの書き込みが各所で相次いだ。
その中で、同じく警察OBで北芝健氏のブログに注目が集まっている。北芝健公式ブログの10月31日の記事「午前8時就寝」で黒木氏について以下のように記述している。
調子に乗って無礼な態度、言動をとったから「てめえ勝負すんのかよ!」と噛みついたらびびって頭下げた。
再度無礼な口をきいたからまた「上等だ、てめえやるんだな」と双方立ち上がった状態になったので言ってやったら「やりません」と膝ぶるわせてイスに座った(以上「北芝健公式ブログ」より)。
黒木氏死亡の直前での黒木氏批判というタイミングの悪さから、北芝氏に疑惑の目を向ける見解もある。また、バラエティ番組での北芝氏はエンタメ色溢れるトークで「ファンタジー北芝」と呼ばれていた。その印象が強いわりには、ブログの激烈な表現に戸惑う声も聞こえる。
しかし、ブログに書かれた内容自体は以前から北芝氏が言及しているもので、新味はない。あくまで特筆すべき点はタイミングである。激烈な表現も知らない人は驚くが、北芝氏の個性の一つである。北芝氏を挑発して怒りの説教電話を受けた人物が、逆に驚いて警察に相談したという笑い話もあるほどである。実際、北芝氏の書籍や原作マンガ『まるごし刑事』には過激な表現が溢れている。バラエティ番組でのタレント活動は、犯罪学者、空手指導者、マンガ原作、要人警護など多彩な顔を持つ北芝氏の一面である。
もともと黒木氏が北芝氏を名誉毀損で提訴するなど、両者は犬猿の仲であった。警察の不正を告発する黒木氏と警察絶対擁護派を自認する北芝氏は立ち位置も対極に位置する。
一方で近年の北芝氏は、警察絶対擁護派とは異なるスタンスも見せていた。北芝氏は2008年1月22日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催されたトークイベント「対決!!公安 VS 右翼 〜北芝健と鈴木邦男の邂逅」では、警察批判の急先鋒である寺澤有氏と共演し、冤罪事件の志布志事件を強烈に批判した。また、2月15日には警察の腐敗を描いた映画『ポチの告白』のトークイベントにも出演した。
その北芝氏が黒木氏の死亡については、岩手17歳女性殺害事件をめぐって黒木氏と岩手県警との間に激しい対立があったとコメントしている。警察の暗部も知る北芝氏の言葉には重みがある。黒木氏が追及していた問題が彼の死によってウヤムヤになることだけは避けてほしいものである。