〈月が出た出た 月が〜出た麻生太郎の上に出た〜♪〉
元歌は、ご存じ福岡県の『炭坑節』。ご当地出身の麻生太郎副総理兼財務相のことを指しているのだが、ここにきて同氏が八面六臂の活躍を見せていることから、こんな歌が流行りだしているのだ。
全国紙のベテラン政治部記者が言う。
「最近の麻生は72歳の高齢にもかかわらず、飛ぶ鳥を落とす勢い。安倍総理が麻生にベッタリで、永田町では『安倍・麻生連立政権』と揶揄する者もいるほどなのです。そのためか、社会保障制度国民会議で、終末期医療患者に『さっさと死ねるように』と失言し、袋叩きにあっても、本人はどこ吹く風。記者の中には『キングメーカー気取りか』と非難する者も多いのです」
ただ、それも無理からぬ話と言うほかはない。ここ最近の麻生氏は、まさにイケイケ状態。今では安倍総理以上の政治力を見せつけていると評判だからだ。
その最たるものが、1月2日に行われたミャンマーへの緊急訪問だろう。この外遊時にテイン・セイン大統領と会談した麻生氏は、5000億円に及ぶ長期貸付金をいきなり放棄。さらに、民主化へ舵を切った同国の当面のインフラ整備資金として、500億円もの貸し付けを約束したのである。
財務省関係者がこう話す。
「独裁政権から民主化路線に切り替えた同国は、天然ガスや銅、ニッケル、ヒスイなど資源の宝庫。労働賃金も中国の5分の1と安く、観光資源と漁業の発展による水産資源も期待される国なのです。また大半が未開地のため、インフラを含めた経済効果は10兆円といわれ、『今後の世界経済をけん引する国』と注目を浴びている。世界中で資源確保に動く中国が、同国にも魔の手を伸ばす今、『この功績は大きい』と、経済界でも話題になっているのです」
要は、中国への牽制と、日本の権益倍増に貢献したことが評判となっているのだが、一方では絶妙な政治力をも見せつけているのだ。
「実は、ミャンマー利権の掌握に後れを取ってはならないと考えた麻生は、元旦に安倍総理の私邸を訪問。持論の経済論をブチまけ、綿密な打ち合わせを行い、その翌日に電撃渡航した。この俊敏な政治力に、記者らも舌を巻いているのです」(官邸詰め記者)
しかも、麻生氏はミャンマー滞在中に、同国のミン・アウン・フライン軍最高司令官とも会談。「ミャンマーは旧日本軍の支援で創設された歴史がある。今後は日本の防衛省、自衛隊と交流を深めたい」などとする発言を引出し、防衛軍の創設を訴える安倍総理をも小躍りさせたのである。
「さらに、この外遊時に麻生は次のミャンマー政権を担うと目される『テー・ウー連邦団結発展党』の副議長とも会談。『ミャンマー日本協会』の設立まで決定し、帰国した。一外遊で三つの楔を打ち込んだことが、評価されているのです」(前出・ベテラン政治部記者)
もっとも、麻生氏の株が急上昇している理由はこれだけではない。外交のみならず、党内でもその求心力は確実に高まっているのである。政治アナリストが指摘する。
「たとえば、麻生は『為公会(いこうかい)』という名の勉強会を催しているが、総選挙後、新たに12人もの新人議員が入会。総勢29名に膨れ上がり、党内でも麻生派が急速に勢力を伸ばし始めている。また、天敵だった古賀誠元幹事長が、総裁選で石原伸晃氏を推して惨敗。求心力を失い議員辞職したことから、岸田派(旧古賀派)内にも手を突っ込んでいる。古賀の子飼いで派閥領袖の岸田文雄と、同派を抜けた谷垣禎一前総裁をそれぞれ外務大臣、法務大臣に就任させたのは麻生の策略で、これらは今では『麻生派の別働隊』と見られているのです」
一方、別の政治部記者はこう語る。
「麻生の快進撃ぶりは、今や党内外に響き渡っている。それもあってか、未確認だが官邸内には『副総理室と呼ばれる秘書官付きの執務室がある』とまで噂されているのです。これが事実なら、永田町史上初となる出来事。安倍総理を裏で操る“陰の総理”の誕生と言えるかもしれません」