震災後の混乱もおさまっていないこの現状で、センバツ大会を無事に行うことができるのだろうか。
年長の監督たちは言葉を選びながらも、「人々が頑張ろうという気持ちになれば」と語ったが、表情は暗かった。東北高校・元指揮官でもある九州国際大付校(福岡)の若生正広監督は、「勇気と力を与えてほしい」と強く訴えた。光星学院(青森)が直前合宿から帰郷できず、そのまま大阪入りしたのは既報通り。同校・仲井宗基監督は「大変な地域同士の対戦になり、思いはお互い強いものがある。こうこう状況でも野球をやらせてもらえることに感謝し、いいプレーを」と語った。1回戦の対戦相手は茨城県・水城高校である。
会場入りできなかった東北高校だが、大会事務局を通じて、「今は野球のことは何も考えられない。昨日やっと寮に電気が通ったが、水は不足し、食料も後何日持つかという状況」と、切実な状況を吐露してくれた。
東北高校の野球部員は近くの避難所に出向き、給水活動を手伝っているそうだ。
年長の監督たちが語ってくれた「勇気」にも共鳴できる。しかし、切実な状況を聞かされると、出場校の部員たちがプレーに専念できるのかどうか、分からない。高野連は18日に予定している臨時運営委員会で開催可否を決めることを、改めて伝えてきた。
「この抽選会にしてもそうですが、高野連は大会スケジュールを動かさないことで、まずは混乱を防ごうとしたようです。被災地の状況を見極めながらになりますが、予定通り大会を開催したいと考えているようですね」
何人かの他社メディア陣とも話をしたが、そんな印象を持った取材陣は少なくなかったようだ。
被災状況の激しい東北地方からは、東北、光星学院、21世紀枠で大館鳳鳴(秋田)の3校が出場する。
同日の抽選会の限りでは、球児たちの家族に関する被災状況までは分からなかったが、「震災後、練習ができていない」と打ち明けてくれた学校(他県)もあった。
大会ナンバー1投手の呼び声も高い吉永健太朗(3年=日大三)、150キロ右腕・釜田佳直(3年=金沢)、強打者・牛崎洸太(3年=前橋育英)、2年生エース・川口貴都(国学院久我山)など、今大会は好選手も多い。阪神・淡路大震災が起きた95年、近畿・関西地区からは育英、神港学園、報徳学園、伊都、郡山など5校が出場。神港学園はベスト8に進む健闘を見せてくれた。代表32校の球児がベストコンディションで甲子園入りできるのかどうか…。だが、予定通り、23日に開幕するのなら、東北地区から出場する3校はもちろん、代表32校全ての球児の頑張りが被災地の皆さんの勇気になってもらいたい。(スポーツライター・美山和也)