1日の午前8時、南関の総大将の追い切りを見ようと集まった関係者が醸す一種異様な雰囲気のなか、悠然と本馬場に入っていくアジュディミツオーには改めてその存在の大きさを感じた。
佐藤太騎手を背にマズルブラストを3馬身ほど追いかける形でスタートし、5F標で外から馬体を併せていく。最後は反応を確かめる程度に仕掛けられ、マズルを5馬身突き放した。タイムは5F63秒0→50秒1→38秒2→12秒0(良)。
佐藤太騎手は「形のつく追い切りができたとは思うけど、息遣いや中身がもう少し」と控えめだが、それもこの馬の絶対値の高さを知っているからこそ。クビをグッと下げた力強いフットワークは総大将として君臨した往時をほうふつさせるに十分な動きだった。
右前球節炎で休養して以来、10カ月ぶりとなるが、担当の藤川厩務員は「調教試験(2月19日)後も23日に1週前追い切りをかけ、28日も14-14をやった。馬体は最終追い切り前で542kg。今までの休み明けの中では一番いいし、鉄砲も利く馬なので」と期待を寄せる。
そして、今回の鞍上には佐藤太騎手が決定。ビッグチャンスに、「デビュー前から調教をつけ、レースで最も乗りたいと思っていた馬ですからね。今までのジョッキー人生の中で一番楽しみ。報知グランプリCは降着になったけど、あの経験を生かしてあせらずにミツオーの競馬ができるように乗りたい」と気を引き締めた。
一方で気になるのはジョッキーではなく、頼もしいパートナーのメンタル面だ。果たして勝負勘が戻っているかどうか。だが、佐藤太騎手はあくまでプラス思考でとらえている。「休み明けの分、いつもの掛かるような気合乗りにはまだ届かないのが、逆に距離を持たせる方向に働くといい」と…。
ライバルのフリオーソも同じく調教をつけているが、今回は譲れない一戦だ。「絶対能力は負けてないですから」とキッパリ。5年にわたってともに築き上げてきた集大成を見せ、南関の総大将の帰還に花を添える。