「どんなガッツポーズを決めようか?」
躍動する東北の雄・メイセイオペラの鞍上で、菅原勲(岩手)は考えていた。地方馬で地方騎手がJRAのGIを勝ったのは、競馬史上いまだこのコンビだけだ。
28日まで期間限定騎乗中の菅原勲騎手。南関4場各1開催ずつと短期間だが、船橋競馬場では今回が初騎乗となる。「どれだけやれるか、いい意味で緊張しているし、楽しみ」すでにエンジン全開、川崎で6勝を挙げた。
昨年は現役6人目、歴代10人目となる地方競馬通算3500勝を達成。岩手リーディングを獲得するなど素晴らしい活躍を見せた。だが、主戦場の岩手競馬は一度は廃止決定が報じられるなど、存廃の危機に揺れた一年でもあった。「存続してほしいが、このままでは賞金も下がって限界がくる。今年が正念場になると思う」岩手の灯を消さぬため、先頭に立って走り続ける。
実は、30歳台前半に引退を考えた。「周りもそれぐらいで調教師になっていたし、トウケイニセイと一緒に自分も引退しようと思った」18連勝(当時の連勝記録)した名馬にレースの“いろは”を教えられた。だが、バトンを受け取るようにメイセイオペラが現れて菅原をさらに高みへ導く。その後もトーホウエンペラーなど名馬が現れては道を紡いでいった。
「どんな舞台でもやれると思う」
自らの腕を信じられるのも名馬たちに手を引かれてここまでやってきたから。今度は自分がみちのく競馬へファンを導く“手”となる番だ。