弟の料理人、富輝さん(63)は「兄には糖尿病があった。亡くなる3〜4日前に見舞いに行って、短い会話を交わした。それが最後になりました」と振り返った。
また30年以上親交のあった『料理の鉄人』の“和の鉄人”道場六三郎さん(83)も「最後にあったのは'12年5月。銀座の僕の店に親しい仲間を招き料理を食べて貰ったが、周さんも来てくれた。糖尿で病気がちだったから、痩せて体調が悪そうだったが、料理は嬉しそうに全部食べて頂いた。仲が良かっただけに寂しいね」と語っている。
病名は、誤嚥性(ごえんせい)肺炎とされるが、富徳さんは以前から糖尿病も患っていたという。医療の専門家によると、「実は肺炎と糖尿病は密接な関係にあって危険だ」と語る。
「糖尿病患者は年々増えています。高齢の糖尿病患者の感染症では、肺炎、特に誤嚥(飲み込み障害、気道内へ飲食物の流入)による肺炎が多くなっている実態があります。肺炎の治療では、起炎菌と同じく適切な抗菌薬の使用が中心になりますが、誤嚥が生じていると、肺炎を繰り返すため、抗菌薬の投与だけでは耐性菌などの問題が生じ、適切な治療ができない場合があります。罹患すると免疫力、抵抗力が低下して感染症になりやすく、最悪の場合、命を落とすことがある。また、燕下障害は飲食物を飲み込む機能(筋力)が衰えているため、水分や食べ物を摂る量も少なくなり、体力も奪われます」
罹患者はそうなると、脱水症状や低栄養に陥り、血糖値のコントロールが難しくなり、糖尿病の感染症は防げず、深刻な事態に陥ってしまうという。
日本人の死亡疾患の統計をみると、第1位が癌、第2位が心臓、第3位が肺炎となっている。ところが、前出の専門家が指摘しているように、死亡率3位の肺炎には糖尿病が大きく関わっていることが判明している。これは、糖尿病患者があらゆる感染症に掛かりやすくなっているためで、肺炎もその大きな要因だ。
例えば、風邪を引いただけで、糖尿病患者は血圧・血糖値が急に上昇する。そのため体の抵抗力が落ち、いろいろな病原体に感染するリスクが高まるのだ。
昭和大学病院循環器内科の内山幸誠医師は、糖尿病の危険性についてこう説明する。
「糖尿病を患っていると、ちょっとした風邪でも自分の力で簡単に治すことはできません。体内の免疫力、抵抗力が極端に低下しているからです。症状がかなり改善していれば、健康な人とあまり変わらない生活を送れますが、外部から侵入してくるウイルスや細菌といった異物を排除する力は、健康な人より何倍も低いんです。ですから、前日まで元気だった人が、あっという間に病変が進み、危険な状態になるケースも少なくありません」