応募者全員に対して面接を実施するのは、衛星都市レベルの採用試験では全国でも珍しい。その発言の強さから“西宮の橋下徹”と呼ばれる今村岳司市長(42)は「当たり前のこと」と言い切った上で、「実際の仕事に使う能力を試験しないと意味がないです。お客さまにいちばん近い公務員である市役所職員は、コミュ力を見ずして何を見るんですか」と自らのブログで語り、意気込みと話題性が通じたのか、前年比約3倍増の2772人が応募。西宮市人事課によれば、過去数十年のうちでは最多だという。
旗振り役となった今村市長といえば、市会議員時代の茶髪姿や政治団体が発行した演出がかったチラシ、さらに市長に就任してからも“偏向報道への取材拒否”を表明するなど、何かと話題の多い人物。それだけに「独自色を出した今村市長らしい採用試験」(市職員関係者)との見方もあるが、一方で「西宮市民オンブズマン」の森池豊武氏はこう皮肉る。
「市長自身、コミュニケーション能力が欠落しているのに、それを職員に求めるなんてお笑いですね。それに、面接する方にも高い能力が要求される。2700人以上を相手に、果たしてそれだけの人間が今の市役所にいるかどうか。結局、市長が自分の手下を増やしたいだけでしょ」
加えて、ある西宮職員も言う。
「市の職員に求められるのは、コミュニケーション能力より事務処理能力と専門知識。その二つがゼロの人間を、例えば面接時のイメージの良さのみで採用してしまったら、おかしなことになってしまう」
応募したある大学生は「面接で自分がいかに西宮に尽くしたいかをとことんアピールしたい」と試験に臨む決意を語っていたが、その思いは実際に今村市長に届くのか。話題作りだけではなくその効果に注目だ。