「あいたたた…やだあ〜! またドレスが汚れちゃったじゃない!」
大勢の観衆の中、盛大に転んだ私を見て、その場にいたみんなが手を叩いて笑う。
「また派手に転んだね、美菜子ちゃん」
「ちょっと、まだ日も変わってない時間ですよ? 酔うの早すぎませんか?」
つられて私も笑うものの、頭がボーッとしていてよくわからない。でも、何だか楽しいからとりあえず笑ってみる。
そんなにお酒が強いわけでもなく、すぐに酔っぱらっちゃうのに、どうしてこの世界に入ったんだろうって、自分でもたまに思う。そのうえ、絡み癖がひどいもんだから、飲みの席で女性として扱われることもほとんどない。
自分でも普通に引いてしまうもん。こんなに酒癖が悪い女がいたら。
「ああ〜、頭が割れる〜…ていうか、もう割れてるんじゃないのこれ」
頭にひどい激痛が走り目覚めると、そこは店ではなく、なぜか行き慣れた居酒屋のカウンターだった。
「大丈夫、そのでっかい頭には異変はないから」
カウンターにうつぶせになっている私の隣には、いつも通り、片山さんがいる。焼酎のロックをグイッと飲み干すと、私の頭をなでながら、ほら、割れてないでしょと言ってほほ笑んでくれた。
「…今何時?」
「今? もう4時前だけど」
「嘘でしょ〜…ごめんね、片山さん。また私記憶がとんじゃってるみたいだよ…」
「いつものことじゃない?(笑)」
あのね、酒癖が悪い女は男性から引かれて当然って思ってるの。だから、こうして酔い潰れて目覚めたときに隣に誰かがいてくれるだけで、すごくキュンとしちゃうんだよ。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
http://ameblo.jp/lisa-ism9281/