寮付きのキャバクラで働いていた明奈(仮名・20歳)は当時の事を以下のように振り返る。
「高校卒業後、親とうまくいかなくなって目的もなく家を飛び出したんです。そのままなんとなく新宿の繁華街をブラブラしてました。そしたら1人のスカウトマンが話しかけてきて。住む場所がないと言ったら寮付きのお店を紹介してくれたんです。携帯小説や映画とかで見てたからキャバクラ嬢自体には少し憧れがありました」
明奈が住む寮の家賃は月5万円ほど。毎月、給料から天引きされる仕組みだ。光熱費も取られるので稼ぎが低いキャバクラ嬢は厳しい生活を強いられる。
都内では特に寮付きのキャバクラ求人が人気だと聞く。しかし実際に応募してみると、寮は存在しているもののすべて埋まっていて、新たに入居できる空きがなかったり、求人ページの書き換えを放置しているケースもあるという。中には寮を用意する気は最初からなく容姿の優れた女性が面接に来た場合のみ、特例で借りる店もあるようだ。
一方、明奈は運よく寮付きの店で働くことになったが、案内された部屋には問題があった。
「部屋はアパートの1階にある2人部屋でした。先に入居してた子が、掃除や片付けをまったくしないズボラな子だったんです。トイレは汚れていてもまったく掃除しようとしないし、服や下着も散らかし放題、お風呂場の壁なんてカビまで生えていました」
最初のうちは掃除を率先して行っていた明奈だったが、生活態度をまったく改善しない同居人に腹が立ち、口頭で注意した。しかしその後も改めることはなく、それどころか明奈が話しかけても徹底無視を決め込むのだった。さらにお店では、待機室に戻ると自分の荷物がグチャグチャにされていたり、同僚や客に根も葉もない噂を流されたりもしたという。
それでも明奈は数か月間、我慢し続けた。しかしそんなある日、買い物のため外出した際、財布を忘れてしまった事に気付き明奈は部屋へ戻った。ドアを開けると、そこにいたのは同居人と見知らぬ人間。なんと同居人は勝手に客を部屋に連れ込んでいたのだ。
「同居人はそれでお金を稼いでいたようです。さすがに我慢できなくなり、すぐにお店をやめて実家に戻りました。両親にも謝って、今は普通のアルバイトをしながら美容系の専門学校に通うため、お金を貯めています。またキャバクラ嬢をやるかはわからないけれど、もう寮生活だけはコリゴリです」
共同で寮生活をする場合、このように夜の仕事よりも同居人との関係性が大きな悩みのタネとなる場合もあるようだ。
(文・佐々木英造)