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取締役11人中外部7人! 東芝事件化阻止“お上に土下座”の魂胆

 東芝が8月18日、9月下旬の臨時株主総会を経て発足する新たな経営体制を発表した。これまで16人だった取締役を11人に減らし、うち社外取締役が7人と過半数を大きく上回り、社内出身は4人にとどまる(従来は社内12人、社外4人)。メディアの扱いは総じて好意的で、発表翌日の同社株は「アク抜け感先行」(市場筋)から大幅高となり、証券マンをニンマリさせた。
 しかしネットの掲示板には、これに冷や水を浴びせる書き込みが目立つ。いわく「社外取締役も第一線を退いた相談役ばかり集めて本当に機能するのか。何だか財界のサロンみたい」「取締役は上場企業の社長経験者を柱とするジジイ集団ですよね。これじゃ腐敗しきった役所の人事と何ら変わらない」などと手厳しい。
 ちなみに7人の社外取締役のうち国内メーカーの社長経験者はアサヒグループホールディングスの池田弘一相談役(75)、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長(68)、資生堂の前田新造相談役(68)の3人。他に伊丹敬之・東京理科大教授(70)、元最高裁判事の弁護士、古田佑紀氏(73)、公認会計士の野田晃子氏(76)、佐藤良二氏(68)という顔ぶれだ。
 「その世界では優秀な面々ですし、彼らを迎える室町正志会長兼社長(9月の臨時総会を機に社長に専念)は経営のチェック機能を高め、粉飾決算疑惑で失墜した信頼回復を急ぎたいのでしょうが、まずは“お手並み拝見”と言うしかありません」(東芝OB)

 実は東芝、2003年の改正商法で導入が認められた「委員会設置会社」にいち早く移行し、経営の執行と監督を分離することで経営の透明性向上を目指してきた。それが経営トップの確執もあって迷走のドロ沼地獄に陥ったのはご承知の通り。室町社長が記者会見で「最初にやらなくてはならないのはガバナンス。内部統制と企業風土の改善だ」と力説し、取締役会を監査する監査委員会や社長など取締役候補を決める指名委員会、さらには役員の報酬を決める報酬委員会の全てを社外取締役で構成するばかりか、取締役会議長に社外取締役の伊丹氏が就くという異例ずくめの“新体制”強調となった。前出のOBは冷ややかに言う。
 「これまでの指名委員会は会社側の提案を追認するだけだったし、他の委員会だってテイの良い“お墨付き機関”でした。形骸化した委員会体制にドップリ染み付いた企業体質が、そう簡単に改まるとはとても思えませんが…」

 逆に言うと、それにもかかわらず東芝が“社外勢”に主導権を明け渡そうとする魂胆は何なのか。
 「まず考えられるのは上場維持でしょう。このままだと東芝は上場廃止に追い込まれる。それを回避する近道がガバナンスの強化を鮮烈にアピールすること。東証1部上場企業では48%が2人以上の社外取締役を選任している。これは東証と金融庁が積極的な旗振り役を務めてきた結果です。今回、東芝が社外から一挙に7人を起用すること自体、金融当局には『頑固な東芝がついに恭順の意を表わした』と映る。上場廃止か否かをめぐる議論が沸騰した段階で、このフェイントは大きなポイントになります」(市場関係者)

 もう一つ見逃せないのが捜査当局に対する“けん制球”だ。東芝の粉飾疑惑は久々の大型経済事件として炸裂する可能性がある。だからこそ「先手を打ってガバナンスを強化し、『これ以上世間を騒がせることはしません』と宣言すれば、刑事事件化を回避できるのではないかとの甘い期待がある」(大手証券マン)との見立てがくすぶっているのだ。
 東芝は過去、2人の経団連会長、即ち“財界総理”を輩出したばかりか、有力OBと安倍政権は近い間柄にある。そこで社外取締役が経営の実権を握る新体制に移行すれば、捜査当局の腰が引けるのではないかという、本来あってはならない“政治力学”への期待に他ならない。
 「東芝は新体制を発表した段階で今年3月期の最終損益は言及しなかった。しかし大幅赤字は確実で、これ以上世間を騒がせれば消費者離れに拍車が掛かって“第2のシャープ”が現実味を増す。そうなれば現時点では資金繰りの全面支援を表明しているメーンバンクが態度を一変させないとも限らない。まして経営不振が続けば会社分割や事業部門の売却が浮上する。そんな事態を阻止すべく、外部勢による経営のグリップ強化という名の“時間稼ぎ”に打って出た側面は否定できないのです」(証券アナリスト)

 いくら取締役とはいえ、2〜3年でライバルの経営陣にヘッドハントされかねない外人部隊に本音を漏らす経営トップなどいるわけがない。東芝の“実験”が吉と出るか凶と出るか。その運命に負けず劣らず、東証や金融庁も本音では気を揉んでいるはずだ。

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