10月16日、東京・渋谷区道玄坂にある雑居ビルの一室で違法パチンコ・パチスロ店「玉三郎」を経営したとして、責任者の寺社忍容疑者(36)ら店員5人のほか、プレー中の客12人が常習賭博容疑で逮捕された。店内には既に姿を消したはずの、いわゆる4号機と呼ばれるパチスロのほか、ギャンブル性の高いパチンコも設置。これらの台を通常の2倍のレートで客にプレーさせ、これまでに1億円以上の利益を上げたとみられている。
また、10月1日には同じく渋谷区の別の店舗(名称なし)を摘発。客を装った捜査官が1カ月かけて内定を行い、0時ちょうどに「下に連れがいるから入れてくれ」と、“キャッチ”と呼ばれる客引きを誘導し、店内に突入。店員と客、合わせて30人以上が逮捕される大捕物となった。
なお、渋谷区では酒井法子の夫・高相祐一被告が職務質問された百軒店に闇スロ店が密集しているといい、前述の2店舗の摘発で、百軒店に店を構えるオーナーたちは「次はウチがやられるんじゃないかと」戦々恐々とした日々を過ごしているとは、闇スロ事情に詳しい事情通の話。
闇スロが急増したのはパチスロ4号機が一斉に撤去された2007年以降だ。その理由は、
(1)撤去されたはずの4号機をプレーできる。
(2)高レートなので1回で数十万円の大金を手にすることも可能。
(3)比較的簡単に営業でき、しかももうかる。
などが挙げられるだろう。
4号機はゲームセンターなどでもプレーすることが可能だが、当然ながら換金行為は違法となるため行われていない。「闇スロは換金できるのが魅力」とは、月に10日は闇スロに行くという常連客。さらに「普通にパチスロを打っているだけ。勝っても負けても自分の金だから問題ない」と続け、闇スロが違法との認識は薄い。
「それにパクられたとしても店員じゃないからすぐに釈放されるよ」。実際に一度ガサ入れに遭遇したものの、調書を取られただけで即日釈放されたと、まるで自慢話のように語った。
たとえば麻薬のように自分自身の体に悪影響を及ぼすことはないし、誰に迷惑をかけるわけでもないから…と甘く考えているやからが多いようだが、闇スロで上げた利益は暴力団の資金源であり、凶悪犯罪の温床となっているのである。そのことを問うと、一瞬男は口をつぐんだものの、すぐに「4号機を一掃した警察が悪い」と開き直ってみせた。
闇スロは店によって営業形態がまちまちだ。夜にのみ営業している店が多いものの、新宿・歌舞伎町には24時間営業の店もあるという。一方、共通しているのは多くの店で“シキテン”と呼ばれる見張り役を置いている点で、店の扉は厳重にカギがかけられており、シキテンの合図がなければ扉が開かれることはない。ちなみに渋谷ではシキテンの代わりにキャッチを雇っており、彼らは新規客1人につき、約1000円程度のバックマージンを受け取っている。さらに客引きだけでなく、警察の護送車を見かけた場合は店に連絡する役割も担っているとのことだ。
なお、闇スロの主流は「ミリオンゴッド」など、射幸性が極めて高い4号機。通常とは異なるROM、いわゆる“裏モノ”が設置されていることも珍しくないという。
「以前は(違法賭博の主流は)ポーカーゲームやバカラなどだったが、ゲーム性が分かりにくく一部の客にしか需要がなかった。だがパチスロなら誰もが知っているし、撤去された4号機が打てるということで、闇スロにハマる人は後を絶たない。昔は大都市のみだったが今は全国どこにでもある」とは前述の事情通。
ちなみに彼によれば、わずか数年で闇スロがここまで急速に広がった原因のひとつはズバリ“毒まんじゅう”。そのため、ガサ入れを行うのは所轄外の警察と相場が決まっているのだという。本当ならとんでもない話だ。
たしかに4号機が打てるというのは魅力的かもしれないが、常に逮捕のリスクがつきまとうし、レートが高いため数十万の金がわずか数時間でなくなることもある。そして、その金は市民の敵である暴力団の資金源となることを忘れてはならない。リスクうんぬんよりもこれが一番の問題点なのだ。善良な市民でありたいのなら、闇スロには絶対に手を出してはいけない。
◎風営法とは
正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」。風適法と呼ばれることもある。風俗店やギャンブル店などに関する法律であり、未成年の立ち入り規制が主な目的。風俗営業を行う場合には、事前に各都道府県の公安委員会の許可が必要となる。
つまりパチンコ・パチスロ店を営業する場合には必ずこの許可証が必要となるわけで、当然ながら闇スロは無許可営業店として摘発の対象となる。