待っていたのは厳しい現実だった。桜庭はマヌーフの打撃を警戒して距離を取ったが、強烈な右ハイキックを放たれると左腕でブロックしたものの、一瞬グラリ。なんとか片足タックルでグラウンドに引きずり込もうともくろんだが、左右のフックを連発で被弾。グラウンドでハンマーパンチの連打を浴びると、レフェリーに試合を止められた。わずか90秒での敗北だった。
ミドル級GP2回戦で敗退。初代王者を目指した桜庭だったが、「DREAM.6」(9月23日、さいたまスーパーアリーナ)で行われる決勝ラウンドを待たずにトーナメントから姿を消した。しかも、ハイキックを受け止めた際に負ったと思われる左腕尺骨骨折の疑いで、試合後はノーコメントのまま病院に直行した。
現在38歳。惨敗直後だけに、年齢的には「引退」の2文字も浮かんでくるが、笹原圭一イベントプロデューサー(EP)は「本人も悔しいはず。この先、まだまだストーリーは続くと思う」と桜庭本人の気持ちを代弁した。
気になる桜庭の今後のテーマについて笹原EPは「9月になるのか、大みそかになるのかは分からないが、ふさわしい舞台、場所を用意したい」とし「別のストーリーになっていくと思う」と明言。ベルト戦線とは一線を画した闘いの舞台に立つことになりそうだ。
では、桜庭にとってのふさわしい舞台とは何か。
真っ先に浮上するのが秋山成勲とのリマッチだ。2人は2006年大みそか「Dynamite!」で激突したが、秋山が体にクリームを塗っていたためノーコンテスト。後に“ヌルヌル騒動”とも言われたが、その後2人はリング上で交わっていないだけに、決着戦は新たなテーマにふさわしい。
PRIDE時代から実現のウワサが絶えなかったものの、いまだ実現していない田村潔司戦もある。UWFインターナショナル時代から因縁深い2人の遺恨清算マッチもいよいよ実現に向けて動き出しそうなムードだ。
さらにPRIDE時代に4度敗れているヴァンダレイ・シウバとのリベンジ戦も考えられる。シウバは現在、米国UFCと契約しているが、DREAMは同じくUFCと契約を結んでいたミルコ・クロコップを参戦に導いているだけに、シウバの契約切れを待てば実現する可能性は十分だ。
ホイス、ホイラー、ヘンゾ、ハイアンら数々のグレイシー一族を破ってきた桜庭だけに、一族最強の男ヒクソンとの決戦もあり得る。ただヒクソンが現在48歳とファイターとしての峠を過ぎた感は否めない。そこで浮上するのがヒクソンの次男クロンとの一戦だ。
総合格闘技経験はないものの、すでに柔術の黒帯を獲得。ブラジリアン柔術では今年5月のムンジアルで初敗北を喫したものの、06年から連勝記録、連続一本勝ちの記録を打ち立てた。「ヒクソンとやるよりも面白いのでは」と笹原EPも乗り気だ。400戦無敗神話のDNAを受け継ぐヒクソンJrとの一戦は“グレイシーハンター”として名をはせた桜庭にとって絶好の舞台となるはず。
DREAMサイドでは桜庭の復帰の舞台として「いろんなアイディアを出していきたい」としており、文字通り夢の舞台が実現しそうだ。