秘密、マル秘、秘宝館…「秘」のつく言葉にとても弱い特捜班は、ミッキーパンプキンの前から動けなくなった。
朝日杯FSで6着に終わった後、シンザン記念4着、アーリントンC3着、毎日杯4着と重賞ではちょい足らず。しかもこれらがペリエ、岩田と名手を配しての結果だけに、重賞、ましてGIでは善戦までが精いっぱいというレッテルを貼ってしまうところだった。
しかし、そんな見方に真っ向から反発したのが松水助手だ。
「この中間からリングハミを着用しているんだけど、効果抜群。ケイコとはいえ、随分、制御が利くようになった。これならレースでも期待できそうだよ」
あと一歩、勝ち切れなかった原因ははっきりしている。折り合い、これの甘さに尽きたというのだ。
「行きたがる気性が災いして、脚をためられないのがネックになっていた。毎日杯にしても勝負どころから行きたがって、その分、ゴール前で甘くなってしまった。それでも大崩れせず、いつも踏ん張るんだから、能力は相当高い。朝日杯で上位人気に支持してもらっただけのことはあるね」
一連の結果を、陣営は善戦止まりというより、底力の証しとみている。折り合いさえつけば…その秘策として取り入れたのがリングハミだった。
秘具の効果は中間の入念な乗り込みにも表れている。以前は坂路のみの調教だったが、今は坂路の後にEコースで乗られており、走る距離が大幅に延びた。それだけ無駄な力を抜いて走れている証拠で、タフな東京コースに対応できる準備を着々と整えてきた。
「これまで競馬は右回りばかりだけど、実は左回りの方がスムーズだから東京は向くはず。しかも、このレースは意外とペースが落ち着いて前が有利になる。とにかく、デキは文句なし。脚をためられれば一発あるよ」
過去10年でも2003年の勝ち馬ウインクリューガー(9番人気)や、グラスエイコウオー(13番人気=2着)、デアリングハート(10番人気=2着)、ファイングレイン(9番人気=2着)など大駆けした馬の多くは先行馬だった。今年は人気馬に差し、追い込みタイプが多いだけに、スキをつくチャンスは十分ある。