「それが今年1月11日に投開票された佐賀県知事選なのです。この選挙時に地元農協や自民党県議の一部が、自公が推す農協改革推進派の候補者に猛反発。反農協改革派である元総務官僚の山口祥義氏を推し、4万票近い大差で圧勝した。この全中のパワーに、安倍首相や自民党幹部は震え上がったほどなのです」(前出・農水省担当記者)
また、前出の政治部記者がこう話す。
「さらに山口氏が当選すると、佐賀県は原発再稼働やオスプレイへの慎重論を唱え、揚げ句に統一地方選の候補者らに『農協改革に是か非か』の踏み絵を課す方針を打ち出した。各県の農協でもこの佐賀方式を取り入れる動きが出始めており、今後、安倍首相と全中の全面抗争は避けられない状況なのです」
一方、これに伴って形勢不利と見た官邸筋では別の動きも出始めているという。
「党内で幅を利かせる二階俊博総務会長は、山口氏の対抗馬擁立時に推薦の判を押さなかったことから“隠れ農協理解者”とみられてきたが、形勢不利と見た安倍首相は彼の懐柔を図りだしたという。周辺議員らに『佐賀と農協はこれから二階氏にお願いする』と漏らしたともいわれ、農協組織に広がる反自民の狼煙を払拭することに、血眼とみられているのです」(前出・農林族議員)
しかも、これに加えて党内の農協改革法案検討プロジェクトチームの会合では、来たるべき統一地方選を睨んだ議員らから、次々と改革に反対の声が飛び出しているという。そのため、官邸側も改革案の軌道修正を迫られている状態なのだ。
「今では農協の監査権や指導権は奪うものの、全中を農協組織のシンクタンクにして、その機能を残そうとの素案が練られるほどに改革案が後退しているのです。また、上納金も廃止の方針だが、各農協と話し合い、了承されればカネを集めてもいいというところまで軟化しているのです」(自民党担当記者)
全中関係者がこう語る。
「結局、争点は農協組織が保有するカネの扱いで、安倍政権はここに手を突っ込んでくる可能性が高い。そのため、2月中の閣議決定と法案提出が濃厚とみられているが、我々は統一地方選後に日程をずれ込ませることを目標に掲げている。全国の農協にハッパを掛けて候補者らに踏絵を踏ませれば、選挙後、安倍政権が転覆する可能性も高いからです。そのため、この2カ月程度が戦いの天王山になると見ているのです」
果たして、安倍vs全中の闘いに和解の道はあるのか。水面下の攻防戦が見モノだ。