東電は先ごろ、政府から原発事故の被害者に支払う賠償金7000億円の追加支援を受けた。これで支援総額は、大阪府の年間予算に匹敵する3兆2430億円に膨らんだことになる。しかし、金食い虫ぶりは「その程度では済まない」との観測しきりで、日本経済研究センターは20兆円規模になると試算している。
驚くべきことに、東電は昨年5月に当時の民主党政権から認定を受けた総合計画で「2014年3月期の黒字」が国と金融機関から支援を受けるための“公約”と謳っている。これほどの政府の手厚い延命策にもかかわらず、今年3月期に1200億円の最終赤字を予想している東電が、来年3月期に黒字を確保するのは不可能だろう。
一部には「苦肉の策で再値上げし、帳尻を合わせる魂胆ではないか」と警戒する声さえくすぶっている。
「東電を法的整理しておけば問題はなかったのですが、事故直後も今も、政府は腹をくくれないでいる。実は東電の株主には富裕層の年金受給者が多く、その東電をJAL同様に100%減資し、株券を紙くずにしてしまったら選挙でしっぺ返しを食らう。それが怖いから当時の民主党政権はもちろん、今の自民党政権も荒療治が振るえないのです」(証券アナリスト)
東電の延命を図れば国民負担は跳ね上がる。法的整理に追い込めば、政府保証で2兆円の緊急融資に踏み切った銀行が非常事態に陥り、忘れかけていた金融危機が現実味を増す。
どちらにせよ国論を二分するのは間違いないが、参院選挙を控えた安倍政権は、例によって先送りする構えのようだ。