音頭を取ったのはJR各社や車両メーカー、商社などで構成する高速鉄道国際会議(宿利正史理事長=元国土交通事務次官)。10月22日に都内で開かれた会議には、高速鉄道の建設を計画する米国、オーストラリア、インドなど海外の要人70人を含め300人が参加、車両だけでなく、信号や運転管理など鉄道システムでの一括受注をアピールした。新幹線ビジネスに携わる国内勢がスクラムを組むのは初めてのことだ。
この「高速鉄道国際会議」、宿利理事長の経歴からも察しが付くように今年の4月、政府の肝いりで設立された。国内で新幹線の新設はもう難しい。海外に打って出るのが近道だが、これまでの海外売り込みはJR各社の思惑の違いもあって車両メーカーや商社が担ってきた。そこで世界に向け、国内勢が結束することで50年間培ってきた“日の丸新幹線”の実績を積極的に売り込もうとの作戦だ。
「ライバル意識が強いJR各社は、ターゲットに据える国や地域が大きく異なる。それでも新幹線システムを知悉しているJRが海外の売り込みに積極的になれば、これまで先兵役を務めてきた車両メーカーや商社には渡りに船だから担当者の目の色が変わってくる。兆単位のビッグビジネスなのだから無理もありません」(大手商社マン)
JR東海が政治家の口先介入を嫌い、全額自己負担でリニア新幹線を建設すると公言するのは「海外のビッグ商談成立を見込んでのこと」と関係者は指摘する。その脈絡で捉えると、安倍晋三首相がオバマ米大統領にリニア導入を働きかけ、太田昭宏国交相がインドのモディ首相に新幹線技術をアピールした図式は確かにわかりやすい。
過去には民間航空機の導入を巡って贈収賄で逮捕された首相がいた。“国策輸出”である以上、その轍を踏まないとの保証はない。