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M7発生90%超 待ったなし関東を襲う大地震「地下空間の盲点」②

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提供:週刊実話

★地下鉄線路網が水路と化す

 ここで本誌が注目したいのは茨城、房総沖である。

 茨城、房総沖で巨大地震が発生すると、東京都内でもM5、6級の地震が発生する。東日本大震災の際はM5の大地震が起こった。さらに、千葉県浦安市など東京湾岸を襲った液状化は、本震の約30分後に発生した茨城沖の余震が影響したと考えられている。房総沖大地震では震源地がより東京に近づくため、一段と酷い液状化が起きるだろう。

 現在、東京では巨大地震が起きた際に備えて地下に巨大な空間を建設中だ。
「具体的には帰宅困難者を収容する空間です。目下、渋谷駅に地下空間を造り、東京駅の地下にも同様の空間を設ける予定です。帰宅困難者は数万人にも上ると見られています。地上にいる人を緊急避難的に収容する施設です。しかし、数万人にも上る人をどうコントロールするのか。それが問題です。もし、電源喪失で真っ暗になってしまったらパニックになってしまう。大地震の後、電源喪失になるのは北海道胆振東部地震の事例が示している通りです。地下に避難しても、人間の心理として、地上はどうなっているのか、見たいし、知りたい。地下に行かなければよかったという事態にならなければいいですけどね」(前出・渡辺氏)

 たとえ、電源喪失という事態が避けられたとしても、壁しか見えない地下よりも、地上がどうなっているのか、知りたいのが人間の性。また、地下に入ってくる人と出る人が衝突して、大パニックになることが予想されるのだ。
「地下は岩盤全体が一緒に動くので、地震の揺れによる影響を受けにくいと言われますが、震源が浅ければそうではない。阪神淡路大震災では地下鉄の駅が壊れました。渋谷駅は地下5階の構造にするみたいですが、暗い中を階段を駆け上がる人がいて、トラブルにならないはずがない。地下防災は穴だらけですよ」(前出・島村氏)

 確かに、地震の揺れは地表に比べ小さい。例えば、2000年に起きた鳥取県西部地震の観測結果を見ると、地表での揺れに比べて地下200メートルでは、その数分の1しか揺れていないのだ。しかし、地表より数メートル下が絶対安全か。島村氏が指摘するように、あまり過信しないほうがいいのかもしれない。

 島村氏がとりわけ心配するのは津波である。都内を走る地下鉄には川の上を走行する区間もある。
「東日本本大震災では、津波で仙台空港アクセス線が水没しました。東京に津波がきた場合、都内の地下鉄の線路網が水路となって、中央官庁のある霞が関なども浸水してしまう可能性があります」(前出・サイエンスライター)

 渋谷駅や東京駅地下に広がる巨大な地下空間がどうなるのか、想像するだけで恐ろしくなる。

 地震の歴史を調べてみると、関東地震の一つに数えられる元禄地震(1703年)では、津波が江戸湾(現東京湾)入り口の浦賀で4.5メートルに達した。江戸湾内でも津波は影響を及ぼし、本所、深川、両国で1.5メートル、品川、浦安で2メートル、さらに隅田川の遡上も記録されている。

 2009年、国の中央防災会議で「200年に1度の大雨で荒川の堤防が東京都北区で決壊」というシミュレーションを設定したところ、驚くべき結果が出た。

 地下鉄の地上出入り口に高さ1メートルの止水板を設置しても、東京都市部の22路線137駅、総延長約215㎞のうち、最大で17路線81駅、総延長約121㎞で水没するというのである。前述したように、地下の線路網が水路なって被害を拡大させるからだ。

 東京湾には、3.5メートルの防潮堤を巡らせてある。それは元禄地震の津波の高さを想定してのことだ。

 しかし、防潮堤や海岸護岸が巨大地震で壊れたり、液状化現象で沈下する可能性もある。河口にある水門や鉄扉が計画通り閉められなければ、津波が川を遡上する恐れもあり、このシミュレーションが現実のものとなりかねないのだ。

 怖いのは津波による水害だけではない。
「東京の地盤は液状化しやすく、地下水位も高い。地震による液状化や潮位上昇によって、地下水位が上昇し、市街地の地表から水が噴き出して、氾濫するといった不測の事態も起こりうる。震災直後は何事もなかったのに、翌日には地下鉄水没といったことも考えるべきです」(前出・渡辺氏)

 さらに、渡辺氏は言葉を強めてこうつぶやいた。
「地下が巨大な棺桶になってしまわなければいいが。しかし、あながち杞憂とは思えない。地下空間の演出は基本は防災事業ですが、防災事業に名を借りた土木事業ですよ」

 逃げ場あるのか。

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