NHKが受信契約を結んでいながら、受信料の支払いに応じていないとして、神奈川県横浜市の男性に、未払いとなっている過去7年分を求める裁判を起こしていたが、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は9月5日、「5年で時効」とする初の判断を示した。
NHKは、男性に05年6月〜12年7月までの受信料19万8940円を請求。一審横浜地裁は、時効にかからない15万2140円の支払いを命じた。NHKが控訴した後、男性は同額を支払ったため、NHKは請求額を残りの4万6800円としたが、二審東京高裁は控訴を棄却していた。
民法は、個人間の借金などの一般的な債権の時効を「10年」とする一方で、家賃や地代など短い期間ごとに定期的に支払う債権については「5年」と定めている。今回の裁判では、受信料の時効がどちらに当たるかが争点となっていた。
最高裁の判決では「受信料契約は2カ月分ごとや、6カ月分もしくは12カ月分の前払いで支払う方法が取られており、未払い分は1年以内の短い期間で定期的に支払われる債権に当たり、5年で時効となる」と指摘。一、二審を支持し、「10年」を主張するNHKの上告を棄却した。
受信料の時効を巡っては、263件の訴訟が係争中。8月末までに確定した判決109件のうち101件が、「時効は5年」と判断しているが、最高裁では初の判断となった。
これを受けて、NHKでは今後も、支払いが滞っているすべての期間について請求するが、視聴者から「時効」の主張があった場合は、消滅時効を「5年」として取り扱うという。
NHK広報は「判決を真摯(しんし)に受け止め、以後、今回の判断を踏まえて対応します。NHKとしては、引き続き公平負担の徹底に努めてまいります」とコメントしている。
13年度末現在、NHKでは5年を超える未払いは計678億円に上るという。今回の最高裁判決により、この分の受信料が回収できない可能性が高くなった。
(蔵元英二)