たくましい胸前。褐色の皮膚に包み込まれたトモの張りもまるで男馬のようだ。桜花賞から4カ月。アストンマーチャンがさらにスケールアップして帰ってきた。
「7月上旬に栗東に戻ってきた。しっかり乗り込んでいるよ」と石坂師は満足げだ。1日に坂路で行われた1週前。まだ余分な脂肪も残る体つきながら、800m51秒1→37秒1→12秒5の超速時計をマークした。2歳時から際立っていたそのスピードにさらに磨きがかかった印象だ。
桜花賞は自身の限界に挑む舞台だった。「牝馬にとって一生に一度の晴れ舞台」と距離が長いのを承知で出走。7着とダイワスカーレット、ウオッカの後塵を拝した。
しかし裏を返せば、スプリンターとして強烈な矜持を見せつけた結果ともいえる。道中は折り合い名人の武豊を持ってしても、なだめ切れない強烈な意志と速さを発揮。
石坂師は「本質的には1400mまでのスプリンター」と話し、上田助手も「昨年の小倉2歳Sでテンの3Fを32秒5でいった。抑えながら古馬GI級のラップを刻むんだから、当時からスプリンターの資質は相当高いと思っていた」と証言した。
今回の小倉1200mはその2歳Sと同じ設定。復活を印象付けるにはこれ以上ない条件だ。
「ここでいい結果を出してセントウルS、スプリンターズSに向かいたい」。かつてダイタクヤマトを育てた石坂師は秋を見据えた。
もう迷うことはない。自分のスピードをひたすら信じて、飛ばすだけでいい。
【最終追いVTR】1週前に坂路で51秒1をマーク。すでに体はできあがっているだけに、今朝は馬なりで軽く反応を確かめられただけ。それでも、時計以上のスピード感で牝馬らしい軽快さ。馬体も引き締まっていて力を出せる状態だ。