めでたく世界遺産への登録が決まった百舌鳥・古市古墳群。その中でも最大規模の大仙古墳(伝・仁徳天皇陵)がある大阪・堺市は、全市を挙げての祝賀ムードに包まれている。しかし、その裏では、いくつかの問題も浮上している。まず、世界遺産登録を巡っての市議会内での“功名争い”だ。
竹山修身前市長の辞任を受けて実施された市長選挙で当選を果たした大阪維新の会の永藤英機新市長は、「松井一郎大阪市長をはじめとする維新のバックアップがあればこそ」と主張。一方、自民党関係者は「前市長の竹山さんあってこその世界遺産登録。快挙を前に辞任せざるを得なかった竹山さんの無念を忘れてはならない」と一歩も譲らない。
問題はこれだけではない。
「前方後円墳の、あの独特の形は空から見ないと分からない。地上や、堺市役所の展望台からでは、小山のようにしか見えないんです。そこで、市立博物館などではバーチャル体験による可視化の企画や、期間限定で遊覧飛行機を飛ばす企画も持ち上がっていますが、古墳群はあくまでも天皇、皇族の陵墓であり、その多くは今も宮内庁の管理下にある。このため、企画の実現は想像以上にハードルが高い」(市役所関係者)
そもそも、古墳群を“観光名所化”していいのかという議論もあるそうだ。
「前方後円墳をデザインに使っただけで『不敬だ』と怒る人がいるんですから、気を遣います」(同)
さらに、子供の探検ごっこやホームレスによる不法侵入、ゴミの不法投棄といった環境問題もある。古墳群が名実ともに世界に誇る歴史遺産になるには、もう少し時間がかかりそうだ。
市はヘリコプターなどでの定期観覧ツアーも模索している。