話はまず、マジックナンバー点灯に失敗した8日に逆上る。初回、一死二、三塁の場面で、城島健司(34)にミスが出た。ショート・鳥谷からの送球をこぼし、三塁走者だけではなく、二塁走者も生還させた…。
「三塁走者のブランコは、その巨漢を城島にぶつけてきたんです。送球はいったんミットに納まったものの、他の捕手だったら、病院に直行していたはずです」(メディア陣の1人)
城島を庇う声も多く聞かれたが、同日、真弓明信監督(57)が送り込んだ投手は5人。計10失点と、初回のミスがその後のリードにも影響を残したようである。
この城島の『配球ミス』にほくそ笑んでいたのは、対戦チームの落合中日だけではないようだ。原巨人も首位奪回の可能性を感じていたのではないだろうか。
「能見が9日に先発することはすでに決まっていました。問題なのは、能見の好不調ではなく、城島との相性ですよ」(ライバル球団偵察部員)
能見が右足甲を骨折したのは、5月2日の巨人戦。この時点で能見は巨人相手に3勝を挙げており、昨季も4勝。巨人・重量打線は能見に対する苦手意識を強めていた。
「能見と城島の呼吸が合わないのは、他球団も指摘していました。昨季は矢野(燿大)の戦線離脱で、狩野(恵輔)がスタメンマスクを被る試合が多かったんですが、能見とその狩野と意気投合していました。他の阪神投手も似たようなことをこぼしていましたが、時間の経過とともに城島と打ち解けて行きました。でも、能見だけは約4カ月の戦線離脱で城島と打ち解ける時間を作れませんでした」(前出・同)
復活マウンドでの能見は7イニングを投げ、失点2。数字上では合格点だが、うち5イニングは走者を背負う『我慢のピッチング』だった。
「3回と6回は『3者連続三振』でした。でも、イニングごとに決め球が違いました。城島は『能見がどんなボール(球種)を投げたがっているのか?』と、手探りで配球を組み立てていました。能見がサインに振る場面も見られましたが、基本的には城島に従っていました。次の登板に向け、話し合わなければならない点もあると思う」(前出・メディア陣の1人)
阪神投手陣は『正捕手・城島』との距離を完全には縮めていない。能見もそうだが、一昨年オフに横浜に移籍した野口寿浩捕手を慕う若手投手も少ない。上園啓史(26)が勝てなくなったのもその一例であり、二軍暮らしが長かった若手、中堅投手は「苦楽をともにした」という意味で、狩野のバッテリーの方が「やりやすい」と思っている。
引退を表明した矢野燿大(41)が絶大な信頼を得ていたことは説明するまでもないだろう。
「打線の構成を考えると、城島を外せないでしょうね。故障しているわけでもないし、『城島と呼吸の合わない投手がまだいること』を他球団に暴露するようなものです」(前出・同)
一概に比較できないが、ライバル巨人もグライシンガーが先発するときは阿部(慎之助)ではなく、鶴岡(一成)にスタメンマスクを被らせている。城島はマリナーズで一塁守備も経験したが、そうなると、正一塁手・ブラゼルを外野守備に入れなければならない。アニキ金本、マートン、林、藤川俊、浅井などの外野手陣にもその余波が及ぶのは必至で、「先発投手との相性」によってスタメンマスクを代えるのは得策ではないだろう。
「あと半年あれば、城島との溝も埋まり、完全に呼吸も合ってくると思うんですが…」(同)
9日、能見の失った2点のうち、4回表に奪われた1点を指し、こんな声も聞かれた。「中日・荒木は完全に配球を読んでいました。要求された変化球が『勝負球』なのか否か、能見は迷いながら投げていた」−−。中日、巨人との直接対決はまだまだ続く。ローテーション通りに行けば、能見は29日に『カモ・巨人』と激突する。確実に巨人から勝ち星を取れるかどうか…。この一戦が優勝の行方を決めると言っていい。真弓監督は“記録に残らないバッテリーミス”に、一抹の不安を感じていたのではないだろうか。