年間20億円から30億円の赤字と言われる球団経営だが、6年目で悲願の初優勝を達成したことで上機嫌。球団身売りを否定したのだという。さらには、親会社のソフトバンクの携帯部門『ソフトバンクモバイル(SBM)』が、球団への宣伝広告費を来年度から10億円程度増額、約30億円とする方針を固めたといわれる。
「優勝によって媒体としての価値が大きく向上した」とはSBM関係者の弁。身内でも初優勝効果でいろいろ球団の存在価値がアップしている。が、SBMの件はともかくとして、孫オーナーの発言は、ヤブヘビになりかねない。球団身売りを否定したということは、そういう動きや情報があったのが前提になるからだ。なにもなければ、そもそも球団身売りうんぬんの話は出てこないだろう。
実際に、球界関係者の間では、ソフトバンクの動向を危惧する声があがっていた。「ダイエーの二の舞にならないか。強気一点張りで拡大路線を突っ走って、最後はパンクしてしまったダイエーの経営とオーバーラップしてくる。一代で一時代を築いたが、それで終わってしまった中内オーナーと、孫オーナーの姿も重なって見える」と。
そんな不安視する見方が出ているのも、根拠のないことではない。球界OBの1人がこう証言している。「王さんが監督を勇退して、球団会長になり、自ら後継者に指名した秋山監督のために、『何億かかってもいいから、実力のあるメジャーの新外国人選手を獲得しよう』とぶち上げ、実行に移そうとしたら、そんな資金はないことが発覚。王さんが親しい球界関係者に『億どころか、1人5000万円くらいが上限だね』とため息をつきながら語ったという話がある。だから、今年も結果オーライだったが、中古で格安のペタジーニを獲得したし、メジャー帰りの城島をなす術なく阪神にさらわれている」。
大々的なCM攻勢をかけ、見た目は派手なソフトバンクの本社の経営戦略だが、その実態は危機感にあふれているというのだ。球団買収の際の記者会見では、「将来は、日本シリーズの勝者とワールドシリーズのチャンピオンチームによる、リアル・ワールドシリーズを実現したい」と遠大な夢を語っていた孫オーナーだが、その後は12球団オーナー会議にも出席せず、野球に対する情熱が感じられない。現在、日米コミッショナーの間で「日米によるグローバル・ワールドシリーズ」構想があり、事務方の検討会議が新設され、動き出しているというのに。
球団買収、苦節6年目にして初優勝、孫オーナーが野球に対して再び情熱を燃やし、日米決戦を口にするようになれば、球界関係者も安堵するだろうが、どうなるのか。しばらくは、孫オーナーの動向を注視する必要がある。