競馬開催は中止になっても、東西トレセンおよび入厩馬のいる競馬場は、馬インフルエンザ発覚後も通常通り調教は行われている。
とくに、普段と変わった様子もなく、調教から帰ってきた馬にまたがる調教助手(助手)が、別の助手に問いかける。
「目標がないな。現状維持か?」
一方の助手が答える。
「まずはこの鼻水を止めることやな(笑)」
連日、大々的に報道されている「馬インフルエンザ感染問題」だが、発覚から3日たった19日(日)早朝…ここにきて厩舎ごとに微妙な温度差が出てきた。簡潔に言えば今週末の競馬開催を「やる派」と「やらない派」とにはっきり色分けされてきたということだ。
「やる派」のある助手は「1、2日で熱はおさまる。とくに馬房は毎朝、洗浄しているから」と前置きした上で、「2歳馬とカイ食いの細い牝馬は、もちろん注意している。それ以外はいつも通りの調教内容。先週、使う予定だった新馬を今週こそ使いたいね」と、競馬開催を前提とした仕上げ方だ。
一方、有力馬を数多く抱える「やらない派」の厩舎に所属する某助手はこう語る。「先生(調教師)からも、『馬にあまり負荷をかけるな』と言われている。ビッシリ仕上げた後に検査して陽性と出たら意味がないからね」と、基本的に15-15の調整を繰り返す毎日だという。
また、意外だったのはインフルエンザに関して「やる派」「やらない派」ともに、悲観的に考えている人が少なくないということ。「鼻水なんてチップのほこりだけで出る。先週、検査した馬は陽性だったけど、カイ食いはいいし、まさに絶好調。獣医からも、『普通に調教していい』と言われたぐらい。今すぐ競馬をさせたい」と話す関係者もいるほどだ。
一見、不穏当な発言にも聞こえるが、肌身をもって接している馬がピンピンしていれば、「なんで競馬ができないの?」となってしまうのも致し方ないことかもしれない。
いずれにしても、「やる派」「やらない派」ともに「早く再開を」と願っているのは同じだ。だが、一向に先が見えない現状に、日を増してストレスが蓄積しているのは事実。いや、馬が一番それを感じているのかもしれない。